平日の午後にゆっくり訪れたい三嶋大社~素敵なシーンウォッチング109

最近はパワースポット巡りなどの人気で、神社やお寺に行くという方が増えていますが、一般的には神様がいらっしゃる神社に参拝に行くのは、お正月の初詣という方が多いと思います。初詣とは、年が明けてから初めて神社や寺院などに参拝する行事で、一年の感謝を捧げたり、新年の無事と平安を祈願したりする、初参(はつまいり)とも言います。

そういった意味からも、神社はご利益を授かる所というのが一般的なのかもしれませんが、ではどうしてご利益が授けられるのでしょうか。これについては諸説ありますが、神様がおられる事で太古から守られて来たエネルギーが集まり、加えて神主さんたちが掃き清め常に清浄が保たれている所であること。さらに祭壇を作り結界を張ってそのエネルギーを高めたり清めたりしている場所であるからと考えられます。加えて鎮守の森、すなわちその地域に住む氏神様がいらっしゃる、緑に囲まれた場所に行くと良い空気が流れているわけで、それが代々受け継がれている場所だからだとも考えられます。

長々と前説をいたしましたが、今回の素敵なシーンは、三島市大宮町にある三嶋大社です。

静岡県東部、三島市の中心部にあり、境内入り口の大鳥居前を東西に旧東海道、南に旧下田街道が走る三島駅からすぐという交通の便が良い場所にあり、2022年度の初詣ランキングは全国18位、62万人の方が参拝されたそうです。周辺は伊豆国の中心部として国府(政治的中心都市)のあった地で、のちに三嶋大社の鳥居前町(とりいまえまち)として発達、いつしか地名も大社に由来して‟三島”と称されるようになったそうです。

‟三嶋”とは伊豆大島・三宅島等から成る伊豆諸島を指すと言われ、主祭神(しゅさいじん)は伊豆諸島の開拓神で、古代には伊豆諸島の噴火を恐れた人々たちがお参りしたと伝わっており、また今、話題の「鎌倉殿」で知られる源頼朝始め、多くの武家からの伊豆国の一宮として崇敬を集めたそうです。ちなみに源頼朝が平家打倒の志をこの三嶋大社で祈願し、源氏再興という大きなご利益を授けたとも言われています。その後は、東海道の宿場町として発達し、往来する庶民からも篤く信仰された神社となりました。平安時代初期に編纂された勅撰史書(ちょくせんししょ)「続日本書紀」(しょくにほんぎ)の758年の箇所に三嶋大社は記載されており、その頃には既に当地で成立している大きな神社であったことが分かります。

御祭神(ごさいじん)は、大山祇命(おおやまつみのみこと)、積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ)で、御二柱(ふたはしら)の神を総じて三嶋大明神(みしまだいみょうじん)と称しています。大山祇命は山森農産の守護神、また事代主神は俗に恵比須様とも称され、福徳の神として商・工・漁業者の厚い崇敬を受けています。正しく、この地‟三島”を守り、発展させてきた神社であり、神様が祀られているのです。

さて、シーンウォッチャーズがこの三嶋大社を取材させていただいたのは、祭事があるわけでも、神吉日(かみよしにち・吉日の中でも、神事、祭礼、祈願などやご先祖をお祀りすると良いとされている日)でもありません。ソメイヨシノが散り、葉桜になって入学式も落ち着いた頃、「喧騒から逃れて一休みしようかな」と訪れた場所なのです。

境内入り口の大鳥居をくぐると美しい庭園が待ち受けています。左右振り分けで神池(しんち)があり、ツツジと八重桜の競演があるその真ん中をランウェイよろしく総門に向かって歩いて行きます。江戸時代の様式を残す貴重な文化財として三島市指定文化財に指定されている神門(しんもん)をくぐると、拝殿前に建てられている舞殿(ぶでん)があります。そして本殿・幣殿・拝殿等(へいでん・はいでん)の社殿があり、ここまで来ると気持ちは落ち着き、いつからともなく平穏な安らぎ感が身体に宿っていることに気が付きます。参拝させていただいた日は平日の雨が降りそうなしっとりした午後で、それ故、人が少なく広い境内がより広く感じられました。

取材以外で神社を訪れるのは初詣くらいのシーンウォッチャーズですが、神社の魅力がこの日、より深くわかったような気がしました。それは、神社は‟魂を休ませる場所”なんだと感じたことです。

今回の素敵なシーンは、初詣やお祭りがある特別な神社の表情でなく、普段のままの神社で感じたそこにいるだけで‟染み込むような安らぎ感”に出会える平日の三嶋大社です。

http://www.mishimataisha.or.jp/

大鳥居前を東西に旧東海道、南に旧下田街道が走ります
神池のツツジが新緑に映えます
昭和6年に竣功された総門
三島市指定文化財に指定されている神門
神門をくぐると慶応2年(1866年)に再建された舞殿があり、同じく文化財に指定されています
江戸時代を代表する建造物として国の重要文化財に指定されている本殿
あまりの大きさに驚く、舞殿の旧大瓦
神門内にある樹齢約1200年の金木犀は国の天然記念物に指定されています
静かな時が流れる午後の境内
ツツジと八重桜の競演が美しい神池