春の訪れをいち早く教えてくれる掛川・龍尾神社のしだれ梅~素敵なシーンウォッチング101

春を告げる現象は、陽ざしの強弱や風の吹く方向、また鳥の声など、日々私たちに届いているのですが、如何せん多忙な日々に埋没して気がつかなかったりします。そんな中で、季節の移り変わりをいち早く教えてくれる自然界からのメッセンジャーは、草木や花たちの息吹や開花なのです。

明るい春の始まりを象徴するのが梅の花。春を告げる木に咲く代表的な花は、桜、桃、梅ですが、梅が最も早く開花し、桃、桜の順番で咲いて行きます。桃や桜との違いは、花のキュートさもそうですが、香りが楽しめる花なのです。

今回、素敵なシーンウォッチャーズが訪れたのは、掛川市御鎮座の古社、龍尾神社の花庭園(はなていえん)で、美しく咲くしだれ梅を取材しました。

龍尾神社は、徳川家康やNHK大河ドラマ‟功名が辻”山内一豊(やまうちかずとよ)ゆかりの社(やしろ)で、一豊も城主を務めた掛川城の守護神として古くから崇拝され、男性には出世運、女性には幸運をもたらすといわれています。

宮司の龍尾司郎さんにお話を伺うと「龍尾姓は江戸時代の終わり頃、神社のある龍尾山にちなんで付けられた苗字で、神社名は江戸時代まで龍尾山牛頭天王(たつおざんごずてんのう)と称した神社でしたが、明治時代に神仏分離令が布告され、‟牛頭天王”の神号を用いる寺社はその名を改めなさいということで牛頭を名乗れなくなり、龍尾に改名したのです」と話しくださいました。

龍尾山の由来ですが、掛川城が築かれた峰から連なる山が龍の頭・胴体・尻尾のように見えることから、この地を守護する龍になぞらえ、頭に当たるのが掛川城、胴が掛川古城、尾が龍尾神社となったそうです。また龍尾神社は掛川城の北東(鬼門)に位置するため、その守護神として、山内一豊公を初めとする歴代城主から篤く崇敬を受けたことでも有名です。

さて今回の素敵なシーンですが、神社隣接の庭園に咲き誇る約300本の‟しだれ梅”です。

神社は小高い小山の上にあるのですが、階段手前の一の鳥居の左側に花庭園に続く道があり、ゆっくりとした坂道に沿って色とりどりのしだれ梅が大きな傘のような枝を広げて迎えてくれます。突き当りの奥の階段を登るとより広い庭園があり、美しく整えられたしだれ梅が7部咲きで鎮座していました。

カメラを構え構図を決めたその瞬間です、春風と共にフレッシュな甘い香気が漂ってきたのです。これこそが梅の花の魅力だ!と幸せな気分に包まれました。視覚で、そして香りで春を知らせるしだれ梅。

藤原定家が‟新古今和歌集”で謳った「梅の花 にほひをうつす 袖の上に 軒もる月の影ぞあらそふ」は「軒の端から漏れて入ってくる月の光が、私の袖にうつっている梅の香りと競い合っているようです」と梅の香りと春の月を美しく表現した短歌ですが、正しく梅の良い香りは月の美しさに勝るとも劣りません。

今年は冬が長かったせいで昨年より1週間から10日遅い咲き誇りですが、やっと訪れた春に例年の何倍もうれしさがこみ上げてきました。気温も上昇し、このレポートがオンエアーされる頃には、春の憂いがより感じられ、梅林もちょうど見頃になっているはずです。

今回の素敵なシーンは、‟香しきしだれ梅が連れてきた待ち遠しかった春”です!

https://tatsuojinja.be/

美しいしだれ梅が春を連れてきました!
冬が長く厳しかった為に1週間~10日、開花が遅かったようです
花庭園に咲くしだれ梅の花道
ほのかな梅の香りが園内に漂っています
色とりどりの梅が織りなす春のハーモニーが聞こえてきます
満開に咲くしだれ梅の控えめな迫力
気品漂う白梅の美しい容姿
マスコミ各社も取材に訪れていました
男性には出世運、女性には幸福を授けてくれる龍尾神社
神社の歴史を教えてくださった龍尾伺郎宮司