伊豆七不思議のひとつ‟神池”を称える魅力満載の岬・大瀬崎~素敵なシーンウォッチング95

世界各地、そして日本のあちこちで七不思議は存在しますが、選に漏れず伊豆にも七不思議があります。

1.心悪しき者が渡ろうとすると、地震のように橋が揺れて渡ることが出来ないという堂ヶ島のゆるぎ橋 2.石室神社(いしむろじんじゃ)の社殿が千石船(せんごくぶね)の帆柱を枕に建てられており、これにまつわる不思議な伝説・石廊崎権現の帆柱(いろうざきごんげんのほばしら) 3.賀茂郡南伊豆町手石の海辺にある阿弥陀窟(あみだくつ)にまつわる伝説・手石の阿弥陀院(ていしのあみださんぞん) 4.鳥精進・酒精進(とりしょうじんさかしょうじん)という不思議な風習が残る河津町(かわづ)・河津木の宮神社(かわつぎのみやじんじゃ) 5.空海が川の岩を砕いて噴出した温泉・修善寺温泉独鈷の湯(とっこのゆ)6.亡くなった母親の声がこだまする・函南町丹那(かんなみちょうたんな)のこだま石、そして7つ目が今回の舞台、勾玉の形をした岬、大瀬崎にある周りが海なのに淡水という池・大瀬明神の神池(おせみょうじんのかみいけ)です。

岬(みさき)は、陸地の海や湖へ突き出している先端部を示す地形の名称で、もともと‟崎”(さき)の美称(ほめていう呼び方)で、同じように3方が海などに囲まれているものを‟半島‟と呼び、非常に小さいものは‟岬”と呼ばれるそうです。

またもや前置きが長くなりましたが、今回の素敵なシーン、大瀬崎(おせざき)は、琵琶島(びわしま)と呼ばれることがある勾玉のような変わった形をした小さな岬(歩いて50分くらいで周れる)ですが、様々な魅力に溢れているのです。

良く知られているのは遠浅で波静かな海水浴場、大瀬海水浴場です。ここは水の透明度が高く、サンゴなども海中にありスキューバダイビングのメッカとなっていて、一年を通じて多くのダイバーが訪れています。加えて‟未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選”に選ばれた駿河湾漁民の信仰の象徴である大瀬神社(正式には引手力命神社・ひきてちからのみことじんじゃといいますが、通称の大瀬神社と呼ばれることが多い)があり、漁民の描いた絵馬や漁船模型が多数奉納されており、県の指定有形民俗文化財にも指定されています。注目すべきは拝殿の右側にはある細長い赤い布!古くから続く風習で、海上の安全を願って漁師たちが収めた赤い褌です。これはインパクト大です!

ヒノキ科の常緑高木ビャクシン樹林の日本最北端の自然群生地もありました。国の天然記念物であるビャクシンの樹林の大木は御神木となっており、見ごたえのある表情をしています。そして大瀬崎の重要ポイント、‟大瀬明神の神池”。海から最も近いところでは距離が20メートルほどで標高も1メートルほどしかなく、海が荒れた日には海水が吹き込むにもかかわらず淡水池であり、コイやフナ、ナマズなどの淡水魚が多数生息しているのです。見るからに神秘的な様相をしていて、何かがいる気配がビンビンと感じられるのです。なぜ淡水なのか?は不明だそうですが、駿河湾を挟んで北方およそ50キロメートルの富士山から伏流水が湧き出ている、などとする説もある一方、海水面の上下に従って水面の高さが変わるとも言われており、謎は深まるばかりです。この池は神域であり、古くから池を調べたり魚や動植物を獲ったりする者には祟りがあるとされてきた歴史あり、また調査の際に機材や人などが池に入ると取り返しのつかない環境破壊となる恐れが強いこと、透明度が低く池の底の観察が難しいと考えられることなどから、現在も詳しい調査はなされておらず、水深すら不明だそうです。

崎の美称を岬ということですが、この大瀬崎こそ海に突き出た誉れ高き景勝地として太古から地元に人たちに崇められてきたのでしょう。神池やビャクシン樹林の存在に加えて、大瀬崎海岸やダイビングスポットとして魅力、そしてこの岬を守り続けてきたて大瀬崎神社を信仰する人々。今回の素敵なシーンは、岬全体が魅力に溢れた大瀬崎です。

駿河湾に面した大瀬崎の西側の海岸の景色
何かが潜んでいる怪しげな雰囲気が漂う神池
大瀬崎の岬信仰の象徴、引手力命明神こと大瀬神社
県の指定有形民俗文化財・大瀬神社
海の安全を願い、漁師たちの赤い褌が奉納されている
欄間に彫られた大瀬神社を守る天狗たち
樹齢1500年以上のビャクシンの大木
ダイビングスポットとして、一年中賑わいを見せる大瀬海水浴場
ビャクシンの木々に守られた大瀬崎
ハイキングコースとしても魅力的な大瀬崎
勾玉の形をした大瀬崎