今、密かにブームとなっている苔テラリウムの魅力~素敵なシーン・ウォッチングFIEL82
コロナ禍で自宅にいる時間が長くなる一方で、密にならないように登山やハイキングが人気となっています。そんな中で自宅の中で小さな森を作る苔テラリュウムが、密かなブームとなっています。世界の国歌の中で作詞者が最も古いといわれている「君が代」にも登場し、♪~苔のむすまで、と締め括られる歌詞は、侘び寂びや幽玄の世界を思い浮ばせる深い神秘性を感じます。
今回、素敵なシーン・ウォッチャーズがスポットを当てたのは、地球上初の陸上生物として生まれた‟苔”。生命の起源は30億年前の海中に生まれた細菌やアメーバ、そして光合成をする藻類だとされています。そしてその藻類が進化して陸上に上がり苔が生まれました。
苔の種類は世界で2万種ほどあり、日本には1800種以上存在するそうです。苔は蘚苔類(せんたいるい)と呼ばれます。大きく分けると蘚類(せんるい)と苔類(たいるい)の2つに分けられ、蘚類とは茎と葉があり多細胞でより植物に近い形状をしているものが多いです。見た目も植物に近いので、苔テラリウムや盆栽で使われるのは主にこの蘚類です。日光に強いものもありますが、日陰や半日陰を好むものが多いです。苔類は単細胞で、石などに張り付きべったりと地に這う塊状のものが多く存在し、葉は深く切れ込んでいます。
苔の魅力は多岐に渡ります。巨木や苔むす渓流の風景が続く人が入らないような原生林での自然鑑賞からお寺の庭園などが人気スポットですが、今、密かにブームとなっているのがガラス容器の中で育てる小さな苔の森、“苔テラリウム”です。湿潤なガラス容器の中で、苔にとって快適な環境を保ちながら育てる方法で、他の植物と比べ強い光を必要としない苔は、文字が読める程度の明るさがあれば育てることができるそうです。
今回お邪魔させてもらったのは、苔テラリウムの販売から制作体験や出張教室など様々なメニューがある菊川駅近くの苔工房アイモスさん。ご夫婦で運営されているお店は、最初はセレクトされた洋服を販売するアパレルショップでしたが、苔の魅力に目覚めたことでお店半分が苔テラリウム専門ショップに改装。今ではマニアの間だけでなく広く一般の方にもよく知られるショップとして、またワークショップも大人気で、ご夫婦で苔テラリウムのオーソリティーとして引っ張りだこになっているそうです。「苔は手間があまりかからず、観葉植物とは少し異なった感覚で楽しめ、インテリアとしても注目を浴びています。ガラスの中に森を作ったり、家にいながら小さな日本庭園を観られるという、ほっこり癒しの空間を味わえることも人気になっています」と初心者でもご夫婦の指導の下、好きなガラス容器と苔をチョイスして自分だけの癒しの空間が作れます。
苔は、空気清浄や音を吸収するという人を癒す力があり、さながら家の中に森を持ち込んだ様な効果があります。自分が理想とする癒し空間を自らの手で作り、育てる楽しみ。箱庭やジオラマを楽しんだ子供の頃の感覚が蘇り、加えて緑豊かな自然の力を感じさせる息吹が小さな空間に充満している様子は、いつまでも飽きさせない魅力があります。
今回の素敵なシーンは、手軽に家の中で小さな森を感じられる癒しの空間‟苔テラリウム”の世界です。