太古の伝説を今に伝える遠州七不思議のひとつ“桜ヶ池の龍神“伝説~素敵なシーン・ウォッチングFIEL63

世の中には不思議なものがたくさんあります。

不思議とは、「そうであることの原因がよくわからず、なぜだろうと考えさせられること。また、そういう事柄」という意味ですが、不思議には、奇妙なものから可笑しいもの、また悪寒が走るような恐ろしいものまでその感覚は多岐に渡ります。そんな不思議なものが7つもある‟遠州七不思議“は、我ら‟素敵なシーン・ウォッチャーズ”にとっては格好の美味しい好物に他ありません!

さて、そんな数多くある遠州七不思議のうち、以前取材した夜泣き石と同じくらい代表的な話として選ばれることが多いのが、今回の取材先、御前崎市佐倉の‟桜ヶ池の龍神“です。

昔話では約2万年前に現れたこの桜ヶ池、水の入り口も出口もないという不思議な池です。実は平安末期、比叡山きっての名僧と言われた皇円阿闍梨(こうえんあじゃり)が、経典で56億7000万年後に弥勒菩薩が現世に現れるということを知り、直接会うために龍に姿を変えその時を待ったというのがその所以だそうです。ですから、この池の深さを測ろうと池に船を出すといつの間にか糸が切れてしまうし、池の水をすべて抜いて池の深さを確かめようとすると暴風雨に見舞われたといった伝説があります。その他にも数々の桜ヶ池の龍神にまつわる言い伝えや神話が今でも語り継がれているのです。

 桜ヶ池の湖畔にたたずむ池宮神社の創建は584年と伝えられ、本殿とともに戦国時代の徳川・武田両軍の戦火で消失してしまったと言います。その後徳川慶喜揮毫の扁額が掲げられている社殿は、1751〜1763年に再建され、市の有形文化財に指定されています。

開運厄除と延命長寿、大漁、海上安全の神として知られる桜ヶ池の池宮神社。秋の9月お彼岸の中日には平安時代から約850年以上続く秋の神事、県指定無形民俗文化財である‟お櫃(ひつ)おさめ“が行われます。この神事は、この池の伝説に基づいたもので、身を清めた地元の若人数十人が古来の泳法、立ち泳ぎでお櫃を持って泳ぎ、池の中心でお櫃を沈めるというもので、数日するとお櫃が浮かび上がります。その時お櫃が空の場合は神慮に叶ったことになり、中身が残っている場合は神慮に叶わなかったことになると言い、太古の昔から今に伝えられる貴重な神事として知られているのです。

桜ヶ池を訪れて感じたことは、その厳かな佇まいです。この池を見ていると雑念が消え、池の中に吸い込まれたかのように穏やかな気持ちになって行きます。しばし時を忘れて、桜ヶ池の風に揺らぐ水面を眺めていました。残念ながら、龍神との面会は叶いませんでしたが、確かに何かがいるという‟不思議“には出会えました。 今回の素敵なシーンは、太古の伝説を今に伝える遠州七不思議のひとつ“桜ヶ池の龍神“伝説です。

約2万年前、風と波で砂が運ばれて堰き止められて出来た湖、桜ヶ池。阿闍梨大龍神様が祀られています
お櫃納め祭で沈められたお櫃が長野県の諏訪湖に浮かんできたことがあるため、
桜ヶ池と諏訪湖が繋がっていて龍神が行き来しているのではないかと言われているそうです
鮮やかな朱色の内装が施された龍神殿
手水舎に彫られた龍神様は動き出しそうな気配で、こちらを見ておられました
この場所から池を見ていると、何処かに何かが潜んでいる様に感じられます
神船のミニチュアや神輿が展示されている資料館内部の様子
静かな佇まいが心を癒してくれる、憩いの場所です
駐車場から道を挟んだ北側に構えている桜ヶ池の鳥居
開運厄除、商売繁盛、福の神、農、耕、水の守護神として信仰されている池宮神社
佐倉護国神社の他にも神船置き場、龍神殿、佐倉護国神社などが鎮座しています