無数の仏様・神様までもが迎えてくれる「龍門山石雲院」~素敵なシーン・ウォッチングFILE62~

貴重な6月の梅雨の晴れ間。太陽が顔を出したらやることはいっぱいあります。洗濯してシーツや布団を干したり、ガーデニングや洗車。出来たら友人とBBQ。しかし、そんな時こそ心のメンテナンスに時間を割きたいと考え、“内観”(内省して自己の仏性・仏身などを観じること)しに訪れたのが、今回紹介する素敵なシーンなのです。

静岡の玄関口、富士山静岡空港には、ベンチでゆっくりしながら離発着する飛行機や滑走路を眺めることができる展望デッキがありますが、実はその他にもうひとつの展望デッキがあります。それが〝石雲院展望デッキ“です。その名の通り、なんとそこから“石雲院”というお寺へ繋がる道があるのです。空港がある高台を下るとすぐに姿を現わす高尾山の中腹にある〝石雲院“。樹齢数百年の巨木が立ち並ぶ新緑の木々がまぶしい表参道を歩くこと10分、厳粛な雰囲気漂う本堂に到着します。

正式名〝曹洞宗龍門山石雲院“は、室町時代の1455年、曹洞宗の開祖道元の十一世法孫・崇芝性岱(すうししょうたい)禅師によって開かれたお寺で、開山にあたり勝間田城主が寺領を寄進、以来、今川、武田、徳川の庇護を受け、御朱印地百五十三石を拝領するに至りました。綺麗に手入れされた境内には龍門の滝の彫刻、おそうじ小僧や中国での修行の様子の像など、石雲院の歴史を知る手掛かりを見つけることができます。

と、ここまでは普通のお寺なのですが、本堂の中にはちょっと変わった面白いものがありました。このお寺、そもそも気軽に本堂に入れる開放的な空間なのですが、入ってすぐの大廊下に七福神たちが鎮座しています。その昔、地元の彫工が彫った恵比寿さまや江戸時代以後、信者や近くの檀家が寄進したものだそうで、さらにその後には驚くような女人像がありました。その女人像にはなんと、タトゥーが施されていたのです。赤い袈裟のようなものを纏っていますが、その下は胸や背中までタトゥーで彩られています。先代の住職さんが収集したものなのか、檀家さんの寄付によって集まってきたのか、いつどこから、どうやってここに来たのかは不明なのですが、今ではこの女人像目当てに、タトゥーに興味のある若者や彫り師の方が聖地として訪れることもあるそうです。

七福神、謎のタトゥーの女人像などの他にも、ご本尊を拝むその両脇にはこれまたカラフルな仏様、さらに周りをよく見ると数え切れないほどの小さな羅漢像が、それぞれが違った佇まいでこちらを見ていました。そんな仏像や七福神を見ていると、思わず笑ってしまいそうになったり、この仏像はしかめっ面をしていて“何があったのだろう”と想像したり、気が付くといつしか時間が過ぎていました。

コロナの影響で空港は閑散としていて、お寺の参拝者も少なく境内は静まりかえっていたのですが、仏様や神様の色々な表情を見ていると寂寥感は微塵もなく、むしろ賑やかな感じがしました。

今回の「静岡の素敵なシーン」は、何かにつけて湿りがちなこの時期に、心の晴れ間を求めて訪れた「龍門山石雲院」。デート・コースで飛行機を見に行く際や、フライト前の空き時間に一人で行ってみるのもお勧めの静かに自己と向き合える場所でした。

〝曹洞宗龍門山石雲院”の本堂
大廊下に鎮座する心安らぐ七福神
胸や背中までタトゥーで彩られている摩訶不思議な女人像
仏壇の左右奥に置かれたカラフルな陶器の像
本堂中央の須須弥壇(しゅみだん)に祀られたご本尊“釈迦牟尼如来(しゃかむににょらい)
カラフルな袈裟をきた賑やかな仏像たち
境内のあちこちで見られるユニークな銅像(天童山老典座和尚と道元禅師)

石段の上にある総ケヤキで作られた山門。二階の梁には十二支が彫られています
表参道を進むと最初に姿を現す高麗門形式の総門
富士山静岡空港にある空港と石雲をつなぐ〝石雲院展望デッキ