鮮度抜群の激ウマしらすが味わえる田子の浦港漁協食堂~素敵なシーン・ウォッチングFIEL85
静岡の食の名産物は海のもの、山のものと実に豊富です。うなぎ、桜えび、イチゴにみかん、メロン、焼きそば、ぎょうざにおでんと何でもござれというグルメな県と言えるでしょう。そんな中で、食欲の秋を満喫したい!と足を運んだのは富士山の麓、静岡県富士市の駿河湾に面した‟富士山しらす街道”にある‟田子の浦港漁協食堂”。
今回、素敵なシーンウォチャーズがダーゲットとしたのは、‟しらす”です。このしらす、元々は鮎やウナギ、イワシ、ニシン、イカナゴなどの魚の稚魚の総称で、これらの稚魚は体に色素が少なく、白色または透明な色なのでこう呼ばれるようになったそうです。そもそもこの‟しらす”という言葉は、一説には江戸時代の奉行所など訴訟機関における法廷が置かれた白い砂利の敷かれた裁きの場所‟お白州”からきていると言われています。しらすを干している様子がお白州に似ていたことから名付けられたそうで、それがいつしか、色の薄い稚魚を総称してしらすと呼ぶようになり、一般的には生まれて1~2か月程度で大きさが2センチ程度までのイワシの子を指す様になったそうです。
さて、ではなぜ田子の浦港のしらすに照準を合わせたのか?田子の浦は駿河湾の最北に位置し、富士山の雪解け水や南アルプスからの山の栄養が豊富に注ぎ込んだ伏流水が富士川や潤井川などの川を通じて田子の浦に注がれます。さらに駿河湾は日本一の深さを誇り、その深海からは湧昇流に乗って栄養豊かな海水が流入しており、しらすのエサとなるプランクトンが豊富に存在していることから、理想的な漁場が形成されて良質な稚魚が育つのです。
しかし実はそれだけではなく、田子の浦港漁協組合の漁へのこだわりがしらすを一層美味しくしているのです。お話を伺った田子の浦漁業協同組合の古江奈津子さんによると「田子の浦港のしらす漁法はこだわりの一艘曳きで、網を引き揚げてからおよそ15分で寄港します。一艘曳きの場合、漁獲量は少なくなりますが、しらすを傷つけることなく鮮度の良い状態を維持できます。そして船上で氷締めの作業などを行い、高い鮮度を保ったまますぐに港へ戻るので生食に適したしらすが水揚げされるのです。また生しらすだけでなく、身に傷が少なく鮮度が高いしらすを釜揚げにするので茹で上がると“しの字”になる、ふっくらとした旨味の濃い釜揚げしらすとなるのです」と田子の浦港のしらすの美味しさの秘密を教えていただきました。
この田子の浦港漁協食堂は、駿河湾に面した田子の浦漁協内にあります。目の前には漁船が係留されていて、潮風が吹き抜けるワイルドなシチュエーション。漁業作業を行う建物内にテーブルと椅子が並べられている簡素さが売りなのです。さて、肝心のしらすですが、今回いただいたのは、ご飯の上に早朝獲れた生しらすと釜揚げしらすが乗った‟ハーフ丼”とご飯の上に釜揚げしらす、しょうゆ漬けしたしらすのちりめん、三つ葉、わさび、のり、あられを乗せ、鰯のだし汁としらすのゆで汁のダブルだしをたっぷりかけたお茶漬け‟親子だし漁師茶漬け”。
新鮮な生しらすは臭みや苦みがありませんし、何より見た目が透き通って美しいのです。味が濃くぷりぷりした食感がたまりません。言葉で表すことが難しいのですが、シンプルを極めながらそれでいて爽快感が追いかけてくる、まるで富士の恵を凝縮したかのような満足感が身体に染み渡る美味しさでした!うまみが分かる日本人であったことにこれほど感謝したことは初めてです!
今回の素敵なシーンは、自然の恵みを最大限に活かす漁法で、限りなく新鮮で美味しいしらすをリーズナブルに提供してくれる‟田子の浦港漁協食堂”の美味しさの裏にある漁師さんたちの経営努力です。
田子の浦漁業協同組合HP http://tagonoura-gyokyou.jp/
住所:静岡県富士市前田字新田866-6 電話番号:0545-61-1004 営業期間:今年は12月28日まで、来年2022年は3月21日〜12月28日の営業期間 営業時間:10:30~13:30
PS ‟田子の浦しらす”は、平成29年6月23日に農林水産省認定の地理的表示(GI)保護制度の36番目の産品として「生しらす」が登録され、令和3年3月31日には「釜揚げしらす」も追加登録されました。地理的表示(GI)保護制度とは、地域で長年培われた生産方法や、気候・風土などの特性により、高い品質と評価を獲得するに至った産品の名称を知的財産として登録し、国が保護する制度です。世界では100か国以上が導入していて、日本では平成27年から導入されています。