今年の土用の丑の日、7月28日に是非食べたい鰻~素敵なシーン・ウォッチングFILE69
7世紀から8世紀に編纂された「万葉集」には、大伴家持が石麻呂にウナギを勧める歌があります。「石麻呂に吾れもの申す夏痩せに、よしといふものぞむなぎとり召せ」
”夏痩せにはむなぎ(ウナギ)を食べると良い”とその頃から鰻は人々から認知されていた栄養食なのです。現在のような異常気象ではないにせよ、夏は体調を崩しやすいので栄養を取って休むという習慣があったのですね。
土用とは、‟季節の変わり目の約18日間“のことを指し、本来は夏だけではなく、立春・立夏・立秋・立冬の年4回を指します。この土用の“土”ですが、古代中国に端を発する五行説という自然哲学の思想で、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなっていて、元素はそれぞれ互いに影響を与え合い、形あるものすべてが変化し循環するという概念です。この中で“土”は、種をたくわえ芽を出させるという働きを司るそうです。
難しい謂われはさておき、日本では丑の日を特別な日として扱い、特に梅雨明けに重なる夏の土用の丑の日は鰻を食べて英気を養ったのです。当時は寿命も短く、季節の変わり目は身体をいたわり精が付くものを食べることが行われてきました。
今回取材でお邪魔させていただいたのは、コストパフォーマンス最高の吉田町うな専さん。吉田町は大井川の水を使った鰻の養殖が盛んだったので鰻屋さんが多い町で、あちこちに鰻屋さんがありますが、国産鰻でこの価格は驚きと言えます。それでいて、機械を使わず手間暇かけて仕上げ、丁寧に焼き上げて出されるうな丼は絶妙なバランスで、食べた瞬間笑みがこぼれる美味しさです。
昨今、鰻は高級な魚になり、そう簡単に鰻屋さんの暖簾はくぐれなくなりました。それは、鰻の稚魚の価格高騰もありますが、料理の質が大切で、料理人の腕が重要となります。鰻を捌いて串を通し、焼いて蒸してまた焼いて、たれを付けてまた焼くという手間をかけた工程があり、これを機械で行うと優れた味には辿り着けません。
うな専の代表、鈴木健太さんは「多くの人に美味しい鰻を出来るだけ安く提供したいと思っています。ですが、価格が売り物ではなく、味が大切です。うちは、美味しい鰻料理をリーズナブルな価格で召し上がってもらって、お客さんに喜んでもらえることが一番だと考えています」と優しい笑顔で答えてくださいました。
今回の素敵なシーンは、静岡・吉田町の鰻屋・うな専と言いたいところですが、素敵なシーン・ウォッチャーズは、鈴木さんの笑顔の下に隠された極な仕事師の顔は見逃しませんでした。これだけのクォリティーの鰻料理をお客さんのことを思い、驚くような安価で提供しているうな専・鈴木さんの心意気が,今回の素敵なシーンです!
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