DESSERT MUSIC #39

「Virtual Insanity」Jamiroquai (12/28 オンエア)

♪これから僕たちの住んでいる世界について話すよ、なんでも鵜呑みにしてしまう人たち
些細なことを大きなことに変えて、誰が僕たちに魔法をかけているんだ?♪

フェイクニュースやネットでの誹謗中傷、SNSの問題点を予言していたかのような未来を映し出した歌詞で、注目を集めたジャミロクワイの「ヴァーチャル・インサニティー」。

1996年に発売したサード・アルバム『トラベリング・ウィズアウト・ムービング~ジャミロクワイと旅に出よう~』は全世界で700万枚、日本でも140万枚を売り上げ、ジャズ・ファンク系バンドのアルバムとしては最大のヒット作となりました。また「ヴァーチャル・インサニティー」では米グラミー賞の最優秀ポップ・パフォーマンス賞デュオ/グループ賞を獲得しています。当時は、ブリティッシュ・インヴェンジョンの再来と言われ、インコグニート、ブラン・ニュー・ヘヴィーズ、ガリアーノ、コーデュロイ等の1980年代のロンドンを本拠地とした面々が世界中でヒット。以降ジャミロクワイの音楽活動は、ポップ、ソウル、ジャズ・ファンク、ロック、エレクトロニカなどジャンルに捕らわれない活動で、独自の音楽的立ち位置をキープしました。アルバムは、世界中でなんと3500万枚以上の売り上げを誇ります。

約30年前、僕の記憶にあるジャミロクワイは、ピエロ張りの奇妙なハットをかぶったヴォーカルのジェイ・ケイが出演するカップヌードルのCMです。未来を予言したような「ヴァーチャル・インサニティー」は鮮烈で、バブル時代の中にある日本でもそのインパクトは強烈でした。しかし、彼の警告するメッセージは見逃され、サウンドだけが耳に残ったことを今でも覚えています。コンサートで訪れた札幌の地下街から歌詞の着想を得たと言われているこの曲で、真実と嘘の見分けがつかない世界を謳歌する日本を、ジェイ・ケイは嘆いたのかもしれません。

今年最後となるデザート・ミュージックは、2020年12月14日、京都・清水寺の舞台で森清範貫主が、縦1.5メートル、横1.3メートルの和紙に、大きな筆を使って今年を表す漢字「密」を書き上げたパフォーマンスを見た時に、この「ヴァーチャル・インサニティー」が僕の脳裏に流れました。

様々な問題が噴出した2020年はある意味時代の転換期です。今改めて、ジェイ・ケイのメッセージに耳を傾けてみて感じる事は、知らなくていい情報が肩を押しあいながら社会に垂れ流され、本当に役に立つ必要なことが探せなくなっている世の中になってしまった。正にいらない情報が‟密“になっている。そして役人や日本のトップだった人は、国民に知らさなければならない情報を”秘・密“にしている異常さ。

ホーキンス博士が人類の未来について、科学の発展は人々が宇宙の銀河系に探索に出かけるのではなく、地球環境の悪化を食い止める為にエネルギーを費やさなければならなくなるだろうと語ったことが、決して遠い未来じゃないということを世界のトップが理解していないことに、今年の漢字‟密”と同じく、侘しさを感じた年の瀬です。