「日本の歴史公園百選」にも選ばれる三島駅前直ぐの広大な市民の憩いの場、楽寿園~素敵なシーンウォッチング113
どの街にも当たり前にある、空気の様な存在の公園。定義としては公園とは、‟公衆が憩いまたは遊びを楽しむために公開された場所(区域)。従って公共性が高い団体・組織によって運営されることが多く、対象となる場所は目的に適したように整備されるが、元々の自然状態を保つことが優先される場合もある”また‟歴史的に庭園や遊園地と重なるあるいは包含(ほうがん)する概念である”と辞書に書かれています。
田舎に行くと公園を造らなくとも、その地自体が公園の様な場所もあり、わざわざ囲いを作ってまで公共性を謳わなくて済んでいますが、これが人の多い都会だとそういう訳にも行かず、また利便性の高い場所だとはっきりと私有地と区別して、その存在を明らかにする必要が生じ‟公園”の存在意義は大きく変化するのです。
今回の素敵なシーンは、三島駅南口直ぐにある公共の公園で市民の憩いの場となっている‟楽寿園(らくじゅえん)”です。静岡県三島市一番町にある三島駅には、東海道新幹線、JR東海道本線、伊豆箱根鉄道駿豆線(すんずせん)が乗り入れていて、1日平均乗降客数は静岡県内では静岡駅、浜松駅に次ぐ第3位の18993人(令和2年度)。静岡県東部では乗降客が最も多い駅なのです。
駅周辺には、三島市役所や三島市民文化会館(ゆうゆうホール)、三島税務署、ハローワーク三島、三島市民体育館などの公共施設が充実。また中央歯科衛生士調理製菓専門学校、静岡医療センター附属静岡看護学校、静岡県東部総合美容専門学校があり、三島駅は、静岡県内では、短大の数が多い駅2位、大学の数が多い駅2位となっています。
今回の素敵なシーン‟楽寿園”は、その立地の良さに拘わらず、広さがなんと約75,474平方メートル(東京ドーム2個弱)もある緑溢れる場所で、1890年には明治維新で活躍された皇族、小松宮彰仁親王(こまつのみやあきひとしんのう)の別邸として造営されたという歴史ある公園なのです。その後、市立公園として三島市が管理するようになった市民の憩いの場は、富士山の湧水が出る庭園が造られ、小浜池(こはまがいけ)などの景観が楽しめます。近年は上流で地下水を取水したことなどが影響し残念なことに水量が激減してしまいましたが、園内の優雅な景観と自然豊かな佇まいは、国の天然記念物および名勝に指定されています。楽寿園は‟日本の歴史公園百選”にも選ばれています。ちなみに、静岡県で他に日本の歴史公園百選に選ばれているものには静岡市の‟駿府城公園(すんぷじょう)・登呂公園”(とろ)、沼津の‟沼津御用邸記念公園”‟御殿場の‟秩父宮記念公園”があります。
公園の中に入ると喧騒が止み、交通量がある県道や鉄道が近いにもかかわらず、とても静かです。そんな由緒正しき、整然とした公園なのですが、園内には、ホオジロカンムリヅル、ショウジョウトキ、オグロプレーリードッグ、ベネットワラビー、ヤクシマヤギ、シロテテナガザル、ニホンザル、レッサーパンダ、アルパカ、カピバラ、プレーリードッグ、コモンリスザル等変わり種を集めたどうぶつ広場やポニー乗馬体験などがあり、加えて白黒写真で見たようなメリーゴーランド、動くのか?と疑う様な豆汽車や、コイン遊具などレトロな昭和初期を彷彿させる乗り物広場が突如出現します。そして1890年(明治23年)に建てられた数寄屋造りの様式を備え、京風建築のすぐれた手法を使った明治期の代表的な歴史的建造物‟楽寿館”など、ここ三島ならではと例えられる‟不思議な時代感覚”が楽しめる場所でもあるのです。
駅前に拘わらず、広大な敷地に鎮座する公園‟楽寿園”は、ともすると時代に取り残された空間なのかもしれないと一種の不安感に襲われますが、その心配には及ばず、1954年(昭和29年)に文化財保護法第109条第1項において規定された、国指定の文化財の種類のひとつに指定されており、平成24年には‟伊豆半島ジオパーク”のジオサイト(世界遺産などと同様に、ユネスコ【国際連合教育科学文化機関】が推し進めているプログラム)として認定されています。
今回の素敵なシーンは、敢えて必要以上に手を加えず、そのままの魅力を維持する‟一等地に鎮座するレトロ感溢れる楽寿園”です。
開園時間
4月~10月 9時00分~17時00分(最終入園16時30分)
11月~3月 9時00分~16時30分(最終入園16時00分)
入園料
当日券 300円 年間入園券 1,000円