素敵な神様が多数出迎えてくださる静岡浅間神社~素敵なシーンウォッチング104

梅が咲き、そして桜が咲いて待ち遠しい春がやって来ました。しかし、お花見宴会は今年も出来ません。そしてコロナ禍に加えてロシアの蛮行で心晴れない日が続いていますが、そんな時にこそ訪れたい、心を落ち着かせてくれる場所があります。

今回の素敵なシーンウォッチャーズが訪れたのは、静岡浅間神社(しずおかせんげんじんじゃ)です。不思議なことに春霞よろしく、先が見渡せないやるせない気持ちが境内に入るとなぜかすっきり晴れていくのです。

葵区にあるこの神社、大己貴命(おおなむちのみこと)を祀り、駿河国開拓の祖神、崇神天皇(すじんてんのう)の時代に建立されたと伝えられる神部神社(かんべじんじゃ)と記紀神話(ききしんわ:古事記と日本書紀との総称)に現れる木之花咲耶姫命(このはなのさくやびめのみこと)を祀る浅間神社(あさまじんじゃ)そして大歳御祖神社(おおとしみおやじんじゃ)は、応神天皇4年(273)今から1700年ほど前に、古代この地方の物流の拠点、商業の中心地であった「安倍の市」の守護神として創祀され、農、漁、工、商業等諸産業の繁栄守護神として親しまれている延喜式内社(えんぎしきないしゃ)であり、『国内神名帳』に正二位奈古屋明神(しょうにいなごやみょうじん)と記される静岡市の地主神で、この三社を総称して静岡浅間神社(しずおかせんげんじんじゃ通称おせんげんさま)と呼ぶそうです。

さてここで話しを進めるまえに重要なお話をさせていただくことにしましょう。勉強不足で申し訳ないのですが、浅間神社はあさま、せんげん、どちらなのかお分かりでしょうか?以前からモヤモヤしていたのですが、今回、この取材でスッキリしました。

神社の公式の見解がHPにありますので以下が解説です。

Q.浅間は「せんげん」「あさま」どちらが正式なのですか?

A.当社では御本社「浅間神社」は「あさまじんじゃ」と申し上げ、神社全体を指す場合は静岡浅間神社「しずおかせんげんじんじゃ」「おせんげんさま」と申し上げます。本来は「あさま」と申し上げましたが、その読みに浅と間の文字を当てたのが「浅間」で、後世音読して「せんげん」と呼ばれるようになったものです。ちなみに「あさま」の語源は一説によると火山を表す言葉といわれております。となっているのです。

簡単に言うとそもそも「あさま」というのは古称で、「せんげん」というのは中世以降から使われ出したそうですね。

さて長年のもやもやが解けたところで、取材レポートに戻りましょう。静岡浅間神社は、神部神社(かんべ)・浅間神社(あさま)・大歳御祖神社(おおとしみおや)の三本社のほかに境内には、麓山神社(はやま)・八千戈神社(やちほこ)・少彦名神社(すくなひこな)・玉鉾神社(たまぼこ)の四境内社が誇らしく協調しあい佇んでいます。ちなみにこれら七社を巡ることを七社参りと言い、全てお参りすると万願叶うと言われています。

境内の神社群を見て歩くだけでも有に一時間以上かかる広大な敷地にある社殿26棟は、全てが国の重要文化財に指定されています。古くから駿河国総社として歴代幕府の崇敬を受けて信仰され、竹千代(家康の幼名)が元服式(げんぷくしき)を行ったことから、江戸時代には特に徳川氏の崇敬を受けました。神部神社・浅間神社の拝殿は総漆塗り極彩色の豪華絢爛な社殿で、江戸時代60年の歳月をかけて再建されたもので、高さは21mもあり見る者を圧倒する迫力があります。

兎に角、由緒正しい静岡浅間神社、歴史的なことはスペースの関係でさて置き、素敵なシーンウォッチャーズが感じた魅力は、複数の神がいらっしゃる中で、県内唯一の医療・薬業の守護神、御神徳(その年の福徳をつかさどるとされる恵方の方角にいる神)がおられる事。また御酒の神、さらには芸能の神として芸能を広め民生を整えられたという事で、現在も廿日会祭(はつかえさい)の最終日に奉納される稚児舞楽(ちごぶがく)が継承されていることに興味が湧きました。この宮廷芸能である舞楽(雅楽(ががく)の上演形態の一つで、舞を主体とするもの)は時代と共に地方に伝播し、神社の祭礼や延年(えんねん)と呼ばれる寺院の行事に取り入れられ、それらが民俗芸能化したものなのですが、現代のエンターテイメントにつながる原点だという事がとても興味深く感じた次第です。

そして今年、トピックスとして長きに渡り継承されてきた稚児舞楽が、重要無形民俗文化財に指定されたといううれしいニュースも入ってきました。

今回、静岡浅間神社で感じたことは、人々の憂鬱な気持ちを受け止めてくれる優しさ。それは、太古から絶え間ない人々の営みの中で存在する受け継がれた信仰であり、それらを守り続けてきた象徴がこの神社群なのでしょう。

今回の素敵なシーンは、悠久の時を愛おしく感じさせてくれた神道、すなわち八百万(やおよろず)の神々の存在です。

*静岡浅間神社の例大祭「廿日会祭」は、毎年4月1日~5日までの5日間開催されます。稚児舞は、例年4月5日に奉納されます。

http://www.shizuokasengen.net/

ここ静岡浅間神社にしかない二社同殿、神部神社と浅間神社がひとつの建物を共有する
境内の入口にも2社が並んで石碑に刻まれています
神部神社、浅間神社、そしてこの大歳御祖神社の3社で静岡浅間神社となります
三社に加える事4社があり、その一つが小高い丘の上にある麓山神社
大拝殿の隣に位置する八千戈神社
日本医薬の神・少彦名命と薬祖神・神農神をお祀りしている少彦名神社
祭神は羽倉東麿、岡部真淵、本居宣長、平田篤胤。学業成就、合格祈願の神
上記、これら七社を巡ることを七社参りと言い、全てお参りすると万願叶うと言われています
江戸時代後期に造営された社殿中唯一素木造りの舞殿。廿日会祭という祭礼が行われます
神部神社と浅間神社の神紋