全ての駅から富士山を見ることができる岳南電車の魅力~素敵なシーンウォッチング89
電車、機関車は子供の頃の一番親しみある乗り物ですが、子供の頃だけでなく大人になってもその魅力は色褪せない、いや益々輝きを見せる不思議な存在なのです。今回の素敵なシーンは、静岡県富士市内を走る鉄道路線、岳南鉄道線・岳南電車にスポットを当てました。
工場地帯を走る岳南電車は、吉原駅から岳南江尾駅まで全10駅を結ぶ全長9.2kmの鉄道路線で、地元に根付いたローカル電車として通勤、通学の足となっています。加えて四季ごとの富士山の景色が楽しめ、話題づくりに長けたイベント列車を運行したりもする、鉄道ファンが気になる鉄道会社で、乗車すれば懐かしい気持ちにさせてくれる御伽の国の実用列車と例えられそうなローカル路線なのです。
もともと岳南電車は、戦後第1号の工事認可を受けた鉄道会社で、今年で73周年を迎えた人で言うと古希を迎えたおじいさんですが、バリバリの現役で老當益壮な鉄道として地元に愛されています。色とりどりな車両は、1両編成から最大でも2両編成。小さな電車がホームに滑り込んでくる様子は、遊園地の乗り物の様な佇まいが愛くるしさを醸し出します。
岳南電車の魅力は数々あります!その中でシーン・ウォッチャーズが一番感動したのは、吉原駅から岳南江尾駅まで全10駅のすべての駅から、霊峰・富士山を見ることが出来るという事。それだけでもこの岳南電車に乗車する価値があるというものです。ただ、問題はお天気!取材時、たまたま富士山がお出になられましたが、雨天や富士山に雲がかかることもあるので、富士山狙いは天気予報と相談の上、ご乗車くださいませ。
静岡の鉄道会社はJR東海、JR東日本、静岡鉄道、遠州鉄道、伊豆箱根鉄道、伊豆急行、大井川鐡道、天竜浜名湖鉄道そして岳南電車の9社。その中で一番小規模な鉄道会社が岳南電車ですが、山椒は小粒でもピリリと辛いと言わんばかりに鉄道ファンの心に刺さる存在感を見せています。
岳南電車を一躍有名にしたのは、一般社団法人夜景観光コンベンション・ビューローが制定する“日本夜景遺産”に選出されたこと!鉄道本体としては日本初の事例で、2014年7月18日、「日本夜景遺産」の「施設型夜景遺産」に認定されたことです。残念ながら今回は取材が出来なかったのですが、車内の照明が落とされ幻想的な雰囲気で運行される‟夜景電車”は、全国から鉄道ファンが訪れる月2回開催される人気イベント。「最初、社内でも賛否があり、協議を重ね実現した鉄道会社として画期的なイベントなのです」と鉄道部運輸区主任兼運転士兼業務部企画運営チーム主任の本多功典さんはその苦労を語ってくれました。通常イベント列車と言えば特別な装いがあったりしますが、‟夜景電車”が使用するのはレトロな昭和の電車で「銀河鉄道の夜」よろしく、夜景旅に出られるのです。この他、完全予約制・座席指定でワンランク上の夜景を楽しむツアー、貸し切り夜景電車‟ナイトビュープレミアムトレイン”や最終電車運転後に普段は立ち入ることができない線路を歩く“岳鉄ナイトウォーク”、終電後の吉原駅ホームに滞在し車両内で過ごせる‟ナイトステイホームin吉原”、大人限定・貸し切りで走行中の機器が発する音を録音できる‟音鉄トレイン”など、鉄道会社の規格を飛び越した企画を打ち出す岳南電車。
普段、撮影機材を満載して機材車で静岡各地を奔走するシーン・ウォッチャーズは、今回の取材で肌に浸みて感じたことは、浸み渡る開放感です。レトロな岳南電車で揺られて味わう‟ゆらぎ”は、まるで温泉に入っているようで、ストップ&ゴ―が繰り返される幹線道路のストレス溜まるドライブとは無縁のレールの上を走る、包み込むような安心感。これこそが鉄道の醍醐味そのものなのだと、車窓から見える富士山に感謝の言葉を伝えさせてもらいました。
今回の素敵なシーンは鉄道ファンに愛され続ける岳南電車そのものであり、その鉄道ファンの期待に鼓舞するように様々なイベントでもてなす、ファンと岳南鉄道員の方々の絆だと感じました!
岳南電車HP