心の目までも洗い清めてくれる美しき寺、油山寺~素敵なシーン・ウォッチングFIEL79

季節が変わると行きたい場所は変わります。ギラギラした夏が終わり、秋の風が吹く頃になるとしっとり落ち着いた所に行きたくなります。季節ごとに似合う行楽地があり、その場所が一番輝くシーズンがあります。そんな秋に尋ねてみたい、心落ち着く場所が今回の素敵なシーンです。

今回訪ねた目や足腰にご利益があるという遠州三山の一つ、医王山薬王院油山寺(いおうざんやくおういんゆさんじ)は、「大宝元年(701)に行基によって開山された真言宗のお寺で、すべての人の穏やかな暮らしと無病息災を祈り、行基は本尊の薬師如来を奉安されました。油山寺という名前は、昔この山から油が湧き出ていたため”あぶらやま”と呼ばれていたことに由来しています」と説明されています。

山門をくぐるとお線香の良い香りが何処からともなく流れてきて、まず香りで気持ちが切り替わります。木々たちが生み出す新鮮な空気を感じながら参道を進むと、太古から流れるせせらぎが道案内をするかのように導いてくれます。礼拝門をくぐると美しく整った宝生殿があります。どこを見ても興味を惹かれる空間は、大宝元年からあるお寺とは思えない、手が行き届いた美しさがありました。

「私たちは、すべての人に‟来ていただくという気持ち”で接しています。観光で来られた方や散歩がてらにペットを連れた方、また病を抱えた方など、いろんな方がお見えになられますが、来ていただいたすべての方に心安らぐ場所として喜んでもらえればと考えています」と話される鈴木快法住職のお話を伺っているだけで、ぬくもりと畏敬の念が感じられる不思議な安らぎ感に包まれました。加えて油山寺は、山全体が信仰の対象となる霊域となっていて、この地にいるだけで気持ちが良い方向に導かれている感覚を覚えました。

お寺は、願いごとやお祈りのような目的だけでなく、観光などでも人気のスポットです。お寺に参ると気持ちが和らぎます。それは、先祖の霊が祭られているところでもあるからかもしれません。しかし、昔の人たちはどうだったのでしょうか?お寺が創建された頃のお寺の役目は仏教伝来に伴って仏像の安置所からはじまり、僧侶が修行するところからやがて人々が集う場所になり、人々に説教する場所、そして現代は冠婚葬祭などの儀式を行う場所として認知されています。ですが、一説によると現在寺院は全国に77,000の寺が存在し、内20,000の寺はすでに空き寺になっていると言います。

鈴木快法住職は歴史に埋没することなく本来のお寺の存在意義を考え、今を生きる人たちにこの安らぎの寺、油山寺、そしてお寺本来の魅力を伝え広めることに精を出されています。眼病平癒や健足にご利益があるお寺として人気があり、また国や県の重要文化財に指定されている多くの歴史的建造物がありますが、それらの魅力以上に‟人々が心の安らぎを取り戻す場所としての役割”を担っていることにこのお寺の本質があるように思えます。

今の時代、目に見える魅力も確かに大切ですが、目では見ることが出来ない、感じる事で見える美しさの方が尊いような気がします。今回の素敵なシーンは、目の御利益があるといわれる油山寺なのですが、実は心の目を開眼させられたワンダーランドなのでした。

線香の香りが漂う美しさ境内
山門をくぐると清らかな風が吹く別世界へと誘われます
太古から人々に安らぎを与え続ける癒しの空間がありました
せせらぎが作るマイナスイオンが、静寂な世界を生み出していました
極楽浄土へ向かう礼拝門をくぐると
宝生殿の美しい佇まい
1300年の時を刻む三重塔
霊山の頂にある薬師本堂
眼病平癒の絵馬が並ぶ本堂の内部
ありがたいお話を聴かせてくださった鈴木快法住職