富士の裾野の癒しの国 ‟時之栖“ 素敵なシーンウォッチング FILE 49
今回の素敵なシーンは、静岡県御殿場市神山にある複合レジャー施設、時之栖(ときのすみか)です。時之栖とは、「小鳥たちが集い、やがて巣作りが始まり、雛が誕生する楽しいひとときをあらわします」とHPの冒頭に書かれていて、‟すみか“というネーミングに強く興味が湧きました。
人は、すみかを探して生きています。漢字で書くと住処、棲家、栖と色々出てきますが、どれも定住する場所を意味しています。これから死を迎えるまで生活する住まいを意味する“終の棲家”や“月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也”という、月日は永遠の旅人であり、来ては過ぎゆく年もまた旅人のようなものであると例えた芭蕉の「奥の細道」の冒頭の句はあまりにも有名ですが、すみかとは人生にかかわる重要な意味を持った言葉なのだと改めて思いました。
僕は、芭蕉の「奥の細道」の冒頭の句の後に続く‟舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして旅を栖(すみか)とす“という、川を行き交う舟の上で人生をおくる船頭、馬の口をつかまえて老いを迎える馬借などは毎日が旅であり、旅をすみかとしているという部分にとても共感を覚えます。
時之栖は、様々なレジャー施設とバラエティーな宿泊施設が完備された大人から子供、そしてあらゆる面で行動的な人々を対象に設計されたワンダーランドと言えます。
レジャー施設は、宿泊施設、温泉・リラクゼーション、レストラン・ショップ、スポーツ・アクティビティなどがあり、宿泊施設だけでもホテル時之栖、御殿場高原ホテルBU、Hotel Brush Upの3つ、またロッジやヴィラ、テント型の宿泊施設OUTDOOR HILL VILLAGE、サッカー・コートやテニス・コート、ボルタリングやバスケットなどのスポーツ施設もあります。加えて美術館、ペットホテル、礼拝堂、神社に病院も完備されていて、夏と冬にはイルミネーションが輝くというムーミン谷のような、この中だけで生活できるリアリティーがあるワンダーランドなのです。あまりにも多岐に渡る施設があるので、今回はほんの一部だけを紹介させてもらいます。その前にひとつ、この時之栖は入場料や駐車場は無料で、どの施設にも気兼ねなくアクセスできるという垣根が低いというか垣根がないという、経済よりも利用する人の利便性を考えた独自の哲学があるようです。
取材させてもらったのはまだまだ霊峰が白く輝く寒い日で、こんな時にこそ行きたいなーと感じる場所の一番手、温泉施設です。時之栖には、天然温泉 気楽坊、林檎の湯、柚子の湯、源泉 茶目湯殿(ちゃめゆどの)の4つの湯殿(林檎の湯はロッジ・スローハウスの宿泊者 柚子の湯は御殿場高原ホテル・ブラッシュアップの宿泊者)があります。今回はその中でゆっくり優雅に富士山を真正面に見ながら入浴できるこだわりの和の空間、源泉 茶目湯殿にロックオンしました。
18歳以上から利用できる茶目湯殿は、内湯、露天、サウナ、展望風呂に加えて硝子張りのフィンランド風サウナがあり、晴れた日にはどこからでも富士山が拝めるというパワー湯スポットです。中でも僕のおすすめは、身体に気泡がたくさん付き血行が良くなりそうな炭酸泉露天風呂。そして広々としたデッキ・スペースにデッキチェアーが完備されている天空の湯。ここから富士山を眺めていると、出来るならここに住んでしまいたいと思うくらい、どっぷりと絶景と湯にはまりました。細かいところですが、タオルは使い放題で入浴に必要なものはほとんど揃っているので手ぶらでOKという気配りがあります。休憩所も充実していて、カフェと談話室、自由に使えるマットやクッション、ブランケットも用意されている縁側が見渡せる仮眠室があるので、遠くからの日帰り温泉利用でもゆっくりして身体を癒すことが出来ます。ここで僕がお勧めするのは、世俗を逃れて心静かに暮らすことの楽しみを説いた中国の処世哲学書の名が施された休憩室 菜根譚(さいこんたん)です。囲炉裏のある寛ぎスペースで、奥は仮眠できるごろ寝スペースに無料のマッサージ・チェアーが用意されています。至れり尽くせりとは、正にこの茶目湯殿のことだと痛感しました。
今回の素敵なシーンは、雄大な景色が目に染み、優しい癒しの湯が身体に浸みる源泉 茶目湯殿です。と、普段ならここでレポートは終了するのですが、この複合レジャー施設、時之栖は、一見するだけでは見過ごしてしまうような小さな仕掛けから、こんなものがこんな所になぜあるのだ!という意表を突く、知れば知るほど深みにはまるトラップがあちこちに存在しています。例えるなら‟不思議の国のアリスが創った癒しの空間“もしくは‟トトロがメイちゃんと相談して組み立てた箱庭”なのかもしれません。
時之栖に来て感じたことは、改めて‟すみか“とは人にとって何かということでした。ただそう簡単には分かることではないでしょう。とにかく、このスペースでは説明しきれない魅力の宝庫ですので、次週も時之栖の魅力的なスポットを紹介させていただきます。お楽しみに!