DESSERT MUSIC #45
「SANDY」JORGE・SANTANA (2/8 オンエア)
半ドンの土曜日は急いで家に帰り、テレビで吉本新喜劇を見ることが小学生の頃の週末の楽しみでした。そのおかげで、今は立派な大阪人気質が宿る口うるさいおっさんに成ることが出来ました。しかしその後、僕のお笑いのベクトルは吉本ではなく、地元の先輩から貸してもらったアメリカのコメディ映画に移ります。その映画こそ僕のお笑いの原点であり、メキシコ好きになるきかっけだったような気がします。その映画とは「サボテンブラザーズ」。
馬鹿馬鹿しいこのコメディ映画が好きになったのは、3人の主人公たちがとことん暗くないからで、ラテンとは明るい人生のことなんだとも思えたことがきっかけです。
物語は、役者トリオ‟スリー・アミーゴス“の西部劇映画を見かけたメキシコ娘が彼ら三人を正義の味方のガンマンと思い込み、村を襲う山賊を追い払って欲しいと依頼することから始まります。しかし3人はその依頼をショー出演依頼だと勘違いし、何も知らずに山賊がはびこる村へいそいそと出かけるというストーリー!
ここまで言うとお分かりだと思いますが、黒沢監督の「七人の侍」そしてその映画のオマージュとして作られた「荒野の7人」の舞台設定を借りたパロディが、スリー・アミーゴスが主人公の「サボテンブラザーズ」なのです。メキシコの伝統的な民族衣装ソンブレロ・デ・チャロスタイル(スペイン語:カウボーイの帽子の意)で乗り込む3人の落ち目の役者、スリー・アミーゴスを演じるのは、スティーヴ・マーティン、チェビー・チェイス、マーティン・ショートの3俳優。陽気で明るく人の迷惑顧みないキャラクターは、痛快と言うにふさわしい底抜け脱線映画です。
さて、今回取材させてもらった伊豆シャボテン動物公園のイメージ設定は、サボテンから伺うにメキシコあたりの中南米がモチーフになっていて、施設の中に流れる音楽はラテン・ミュージックです。これが何とも言えない南国の気楽さを演出してくれていて、動物たちの放し飼いや身近に触ってエサやりが出来るスタイルにぴったりです。人はムードに左右されるもので、下町の居酒屋では演歌が、静かなバーではジャズがと言うように、サボテンと放し飼いの動物にはラテン・ミュージックがとても似合うのです。
さて、そんな伊豆シャボテン動物公園で僕のイマジネーションを刺激して流れてきた今回のデザート・ミュージックは、ラテン・ロックの雄、カルロス・サンタナの弟、ホルヘ・サンタナです。少しマニアックになりますが、知る人ぞ知るいかしたギタリストなのです。ホルヘは、兄のC・サンタナの音楽とは少し毛色が違い、今回選んだ1972年にリリースしたファースト・ソロ・アルバムではソフト・ロックなメロー・サウンドを奏で、ビルボードで14位を記録。そして何より印象深いのは中身もさることながら、水着女性の下半身アップのジャケットが素晴らしいのです!ラテンにふさわしいエキゾティック、いやエロティックな良い味を出しています!しかしながら残念なことに、昨年サンフランシスコの自宅で心臓麻痺の為、亡くなっていました。享年68歳。今回のデザート・ミュージックは、今は亡きホルヘ・サンタナを忍んで彼のヒット・アルバム『ホルヘ・サンタナ』から「サンディ」をチョイスしました。
笑いの裏には悲しみが隠れています。陰と陽、光と影、静と動…互いに対立する属性を持った二つの気は、万物の生成消滅と言った変化を起こさせるという、中国に端を発した思想があります。今、世界中にたくさんの悲しみが溢れています。それでも私たちは前を向かなければならないのです。少し凹みそうになった陰を感じた時、シャボテン動物公園の生き生きした植物や動物たちを見ていると自然に陽を感じました。だから、悲しいことがあったとしても、笑顔で楽しく、毎日明るく生きて行こうという思考が生まれるのです。音楽は命を元気にする最たるものだと思います。特に、伊豆シャボテン動物公園で聴こえてきた音楽には、元気が漲っているように感じたのでした!