人とワンちゃんとの素敵なパートナーシップ! 素敵なシーンウォッチング FILE38
人間と犬の関係は古く、約40万年前~15万年前の旧石器時代の遺跡から犬の祖先であるオオカミの骨が発掘されていたりし、様々な説がありますが、2~5万年くらい前から共同生活をするようになったと言われています。また、古代エジプトの神話には犬の姿をした神アヌビスがいて、当時から犬が神聖なものとして大切に扱われていたことがわかっています。犬の祖先は人と同じ生活圏内にいたオオカミで、人間が共同生活を送るために従順で人懐こいものを選んで飼育したことで、オオカミが犬となり最初の家畜となったと言われています。
なぜ犬が人気なのでしょうか。それは、最高のパートナー・シップを感じさせてくれる動物であり、犬の性質によるところも大きいと思います。オオカミの名残で群れを作りリーダーに従うという犬の気質から飼い主との良好なコミュニケーションが作れる、また人も犬の存在のよって生活の質を向上させてこられた歴史があるからでしょう。今回の素敵なシーンは、人と犬との素晴らしい関係性です。
本題に入りましょう。今回の主役は小学生の登校を見守る1匹の犬です。静岡県牧之原市の市立萩間小学校の登校時間朝7 時半。元気よく登校してくる様子を先生方が見守る中、一匹の黒いラブラドールレトリバーが校門で先生方と同じく登校する児童たちを見守っています。中には犬に抱き着いて離れない子供もいますが、犬は嫌がる様子もなく、まるでその子の飼い犬の様なそぶりで相手をしていました。
この犬の名前は‟ジェード“9歳のメス犬で、人間に例えるとかなりのおばあちゃんです。ジェードは毎週月曜日の朝7時半になると、飼い主の永田菊寿さんに連れられて校門前に現れ、お行儀よくお座りをして児童の登校を待つ‟見守り犬”として、数々のメディアにも登場する地域のヒーロー犬。
見守り犬になったいきさつは、ジェードは富士宮市の盲導犬訓練施設で生まれ、盲導犬になるべく訓練を受けていましたが、残念なことに最終試験に2度も落っこちてしまいます。賢く性格もおとなしく人に従順なのですが、好奇心旺盛な性格が裏目に出て不合格になったそうです。そんな時、思うことがあり地元に帰って犬を飼いたいと会社を早期退職した永田さんとジェードは出会い、めでたく永田さん一家に迎えられます。
地元の奉仕活動で、小学校の校長先生から頼まれて生徒を守る‟見守り隊“の依頼を受けた永田さんは「ジェードと一緒なら」ということでこの活動が始まりました。「学校に行きたくないと思う子どもたちの気持ちを、少しでも和らげてあげられたらいいかなと思います。特に月曜日はそんな子供たちにとって一番嫌な曜日なんですよね」と永田さんは、雨の日も夏の猛暑日もジェードを連れて小学校の校門に立ち、子供たちを見守り続けています。大体の犬は子供にいじられることを快く思っていません。しかしジェードは達観したお坊さんのごとく、どんな扱いを受けても決して吠えたり怒ったりしませんでした。その忍耐強さというか癒しの精神に飼い主の永田さんもですが、周りにいる人や児童たちも自然に笑顔になります。
実はこの取材、知り合いと待ち合わせをしている相良海岸で、偶然ジェードを散歩させている永田さんに出会い「明日、見守りに朝小学校に行くのでよかったら見に来ますか」とお誘い頂いただいことがきっかけでした。
相良ビーチで夕方のお散歩をする愛犬家の方たちと出会いは、何気ない日常のひと時ですが、かけがえのないひと時でもあるのです。日常の中の幸せはともすれば見逃しがちですが、ふとした瞬間に人は気が付くのです。ジェードとの触れ合いは、そのきっかけとなりました。あらためて、今回の素敵なシーンは、永田さんとジェードが作った素晴らしいパートナー・シップです。