DESSERT MUSIC #44

All Around MeCHAR (2/1 オンエア)

人は美しいものや魅力あるものに惹かれます。特に普遍的な存在には、心奪われる力が宿されています。そんな力を利用したのが、絵画であり写真でありテレビです。しかし現代社会においては、そのビジュアルの持つ魅力の使い方に難があるように感じる事が少なくありません。

ティーン・エイジャーのテレビ離れが叫ばれて何十年も過ぎていますが、それは当たり前のことで、様々なソーシャルメディアが登場してよりその傾向は顕著だと言えます。「テレビ、面白くないから見ない」と、あからさまに言う子供たち。それでもテレビは主要メディアの座に鎮座しています。それは既得権益と言わざるを得ないほど、情報を収集するシステムを確立し、それに従って経済的に運営されているからそう簡単に変革は起こらないのだと思います。また、そこに従事するスタッフの人たちがその座に甘えて、ブレイクスルーできなかったという理由でもあるでしょう。

今回取材した伊豆の国パノラマパークのロープウェイで登った葛城山は、富士山をハイビジョン・テレビで見る様にまじかで鮮明に見ることができます。例えるなら富士山リアルテレビ!しかし既存のテレビ局と大きく違うのは、この葛城山山頂のパノラマパークの富士山リアルテレビ局は、時代のセンスを取り入れて富士山を見る楽しみを大いに掻き立ててくれる仕組みが施されているのです。

富士山がまじかに見える空中公園の富士見テラスに立つと、目の前に日本一美しい霊峰が飛び込んで来ます。極度の高所恐怖症の人でない限り、この景色を見たくない人はいないでしょう。それどころか、時間が許すなら刻々と表情を変える自然のドラマを心行くまで眺めていたい衝動に駆られるはずです。そんな気持ちに答えた結果、ロープウェイが設置され、展望台そして足湯やラウンジ、喫茶といった空中公園ができたのです。

“雄大な富士山を見るために”という一途な思いが貫かれた結果、誕生した伊豆の国パノラマパーク。このメガトン級のビジュアルを最大限に生かした場所で聴こえてきたのが、今回のデザート・ミュージック、CHARの「オール・ラウンド・ミー」です。

言わずと知れた、世界のロック・ミュージックシーンで通用する数少ない日本人アーティスト、CHAR。「オール・ラウンド・ミー」は、1988年にCharが立ち上げたプライベイト・レーベル「江戸屋」からのファースト・アルバム『Psyche』に収録された、アコースティック・ギターによる大らかでリズミカルな息吹を感じるナンバー。後半の歌詞で♪移り行く季節に耳を傾けてごらん 生きるものは全て 自分の命と向き合わなければならないんだ 太陽は君を照らしてくれる さあ、高く真っ直ぐに立ち上がろう♪と潔くすべてを受け入れることを覚悟した心境が綴られています。

富士山の絶景を堪能するために、無理を押して葛城山にロープウェイを架けた杉山勝美氏の心意気。そしてその後も絶景に甘んじることなく空中公園を作り、年齢問わずたくさんの人に楽しみを提供するパノラマパーク。人を楽しませるための苦労を惜しまないエンタテイメントを葛城山山頂で感じました。

空中公園の富士見テラスに立ち、孤高の存在として世界に知れ渡る富士山を見ていると、存在感と共に溢れる生命の力を感じると同時に、この場所を作った意味が良く理解できました。その瞬間、CHARの「オール・ラウンド・ミー」が聴こえてきました。