DESSERT MUSIC #26

「Black Summer Rain」Eric Clapton  (9/ 28 オンエア)

僕が高校生の頃、エリック・クラプトンのソロ名義で最初に買ったアルバムは、1974年にリリースされた「461オーシャン・ブールヴァード」でした。それから10年程が過ぎて音楽ライターとして生計を立てるようになって、あらためてこのアルバムの評価を様々な音楽誌で知ることとなった時に、とても気になる形容詞に出会ったのです。翌75年リリースの「安息の地を求めて」76年「ノー・リーズン・トゥ・クライ」と共に「ダウン・トゥ・アースなアルバム」という表現が使われていました。

「ダウン・トゥ・アース」(Down to earth)とは日本語で「地に足がついた」「落ち着いた」といった意味があります。どうしてこの言葉に興味を覚えたかというのは、その頃の僕は、今もそうですがハワイにどっぷりハマっていて、出来ればハワイに住みたいと思うほどのフリーク、いやアディクティヴだったと言っても過言じゃない状態でした。そんなハワイに足しげく通うようになって気になったお店の名前が「ダウン・トゥ・アース」でした。

ダウン・トゥ・アースは、1977年にハワイのマウイ島で誕生した自然食品ストアで、地元産の新鮮な野菜、オーガニック&ナチュラル製品とベジタリアン・ライフスタイルを啓蒙していて、なんと店内では肉や魚が一切販売されていないという徹底したお店でした。

クラプトンが、「461オーシャン・ブールヴァード」でドラッグ依存から立ち直り、その後のアルバムで見せた、いや聴かせた音は実に「ダウン・トゥ・アース」なんだと、ハワイで気づいたことを今でも覚えています。

さて、今回のデザートMですが、1976年にリリースされたエリック・クラプトンの「ノー・リーズン・トゥ・クライ」のラスト・ナンバー「ブラック・サマー・レイン」です。

このアルバムは、ザ・バンドが所有するシャングリ・ラ・スタジオで、ザ・バンドのメンバーはもちろん、ボブ・ディラン、ロン・ウッド、ジェシ・エド・デイヴィス、ビリー・プレストンなど、クラプトンが愛してやまないメジャーなミュージシャンが参加して作られました。内容的には、クラプトンがクリーム解散後、デラニー&ボニーなどとのセッションを経てどんどん「ダウン・トゥ・アース」志向になっていった、ある意味集大成のアルバムで、♬太陽はどこかへいってしまったのか、黒い夏の雨がぼくに降りかかる♪と現実を知ったように歌うこの「ブラック・サマー・レイン」こそが、彼がドラッグ依存から抜け出したことを自覚した、地に足が付いた歌なんだと思います。

建立された太古の時から、天変地異や悪政に苦しめられていた庶民が救いを求めた場所がこの舘山寺であったように、シャングリ・ラ・スタジオに救いを求めたクラプトン。お経を読むように歌う「ブラック・サマー・レイン」は正しく「ダウン・トゥ・アース」です。最高気温に襲われた舘山寺のロケで、蝉しぐれと共に幻聴の様に聴こえてきたお経は、実はクラプトンの歌声だったのかも?!知れません。

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