素敵なシーンウォッチング FILE26 舘山寺の観音像の微笑
今年の最高気温41.1度を浜松市内で記録した日、僕たちは素敵なシーンの取材で、浜名湖に面した舘山寺にいました。クーラーの効いた車から車外に出ると、アスファルトから立ち昇る熱の反射で生き苦しくなるくらいの体感温度。40度は優に超えているはずで、今までにそう体験したことがない‟やばい暑さ“が感じられました!しかし、時間が限られているこのロケで、暑いからと言って取材放棄はありえません。意を決っして舘山寺の参道階段を登って行ったのです!
舘山寺は平安時代、弘仁元年(810年)、弘法大師が高野山より仏道行脚の際、舘山を訪れて当地において修行し、その際に開創されました。旅する人々の心を清める寺として、山紫水明のこの地を選んだと言われています。本堂は約30段の階段を登った右側先にあり、背景の山を背負う様に建てられています。
鎌倉時代、文治三年と元中元年、2度の兵火によって焼失しましたが再建され、江戸時代に徳川家康公により御朱印判物を賜り東海の名刹として繁栄しました。しかし明治三年新政府の神仏分離令(廃仏棄釈)により廃寺となります。その後20年を経て、明治二十三年、再興が認められ秋葉の火祭りで有名な秋葉山・秋葉寺(しゅうようじ)住職・牧泰禅和尚を招請し、秋葉寺の出張所を持ってくる名目で再興し現在に至ります。
うだるような暑さで、半分以上頭が回らない身体が動かない、そんな試練満載の中での取材は相当きついものでしたが、舘山寺の本堂から裏山の散策コースを昇り、山頂手前にそびえる舘山寺温泉街を見下ろしている観音像に出会った瞬間、暑さが一瞬消えた錯覚を覚えました。釈迦が出家前にした‟厳しい修行を行う前の穏やかな表情“を再現したと言われる高さ16メートルの巨大な観音像。そう簡単には作れない代物であり、信仰という言葉が持つ偉大なパワーが感じられました。
僕たちのロケは取材した後、注目されるスポットになるという不思議な巡り合わせがあります。タウン誌の表紙になった小笠山六枚屏風、キムタク主演のドラマのロケ地にとなった三保の飛行場、そしてこの舘山寺は安部元首相そっくりの舘山寺大観音像があるということで、辞任表明があった8月28日以降、マスメディアに再び取り上げられる人気となっているそうです。
今回の素敵なシーンは、長い歴史の中で幾度もの困難を乗り越えて、今もその雄姿を称える舘山寺の存在であります。人の人生も同じく、幾度の困難を乗り越えてからこそ生きる意味を知るのだと、気温40度超えの中、噴き出る汗を拭いながら僕たちは参道を登るのでした。