DESSERT MUSIC #46

Ambient 1 Music for AirportsBrian Eno (2/15 オンエア)

1965年に出版されたフランク・ハーバートのSF大河小説『デューン』を映像化した『デューン/砂の惑星』(Dune)は、僕の好きな映画の一つです。というより個人的に奇才・デビッド・リンチの作品のほとんどが好きなのですが、特にこの映画には興味がそそられました。

『デューン/砂の惑星』 (1984年)は、映像化不可能といわれた大長編SF小説を、前作『エレファント・マン』で成功をおさめたデビッド・リンチ監督・脚本により映画化。“デューン”と呼ばれる砂の惑星アラキスを舞台に繰り広げられる勢力争いを、壮大な世界観、壮大なスケールで描いたSF映画の傑作です。ポリスのスティングの怪優ぶりに注目が集まりましたが、それ以上にブライアン・イーノ、TOTOが起用されているサウンド・トラックの秀逸さに感動しました。特に、イーノの宇宙空間をイメージさせるサウンドで異次元の世界に飛ばされます。宇宙空間の無の世界観というのか、人間の感覚を麻痺させるような孤独感が表現された究極のアンビエント・ミュージックが存在しています。

この「ラジオで見る静岡」のコーナーでは、実際にその取材地で聴こえてくる音とは別に、インスピレーションを受けて感じたものが変換されて、脳裏に浮かび上がる音楽をデザート・ミュージックと名付けさせてもらっていますが、デザート・ミュージックを簡単に言うとサウンド・トラックなのです。

メイン・コンテンツでも書きましたが、竹林の小径で円形ベンチに寝転がって空を仰ぐと感じた別世界。竹が風に靡いて起きる葉音に全身が包まれるとどこかの星にワープした様な錯覚が起きたその瞬間に浮かんだのが、映画「デューン/砂の惑星」のワンシーンでした。そしてその時のインスピレーションが基となり聴こえてきたのが、ブライアン・イーノの宇宙空間をイメージさせるアンビエント・ミュージックだったのです。

ブライアン・イーノは、1948年生まれのイングランド出身のキーボード、シンセサイザープレイヤー&プロデューサー。美術学校に在籍しながら電子楽器や音声理論に関心を抱き、学校に在籍していた1970年代よりアマチュア・グループで音楽活動を開始。アンディ・マッケイの誘いによりロキシー・ミュージックにシンセサイザー奏者として加入します。その特異なファッションや音楽スタイルで注目されますが、ファースト・アルバム『ロキシー・ミュージック』と『フォー・ユア・プレジャー』の2枚のアルバムに参加した後、ロキシー・ミュージックを脱退します。その後、キング・クリムゾンのギタリストであるロバート・フリップとのユニット‟フリップ&イーノ“で活動。ソロ転向後は、アンビエント・ミュージックを開拓した第一人者として知られて行きます。ソロ名義では1974年に『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』『テイキング・タイガー・マウンテン』と独特なロック・アルバムを発表し、801というバンドでライブを行うなどした後、前衛的な現代音楽、ニューエイジ的な作風を採用するようになります。

イーノは『デューン/砂の惑星』以外にも多くの映画音楽を制作しています。有名な作品は、1968年から1972年までの4年間、9回にわたって月への有人飛行を行ったアポロ計画のドキュメンタリー映画『宇宙へのフロンティア』のサウンド・トラックです。イーノが1983年に発表した『アポロ』がサウンド・トラックの土台となっています。余談ですが、WINDOWS95の機動音もイーノで、ちなみにVistaはロバート・フリップです。

アンビエント・ミュージックの魔術師が奏でる音楽は、既存のポピュラー・ミュージックと一線を画す超感覚の世界が表現されています。最高に美しいBGMと称されるイーノのサウンドには、映像をより印象的に浮かび上がらせるサムシングが潜んでいるのです。

今回のデザート・ミュージックは、1979年にリリースされたブライアン・イーノのアンビエント・シリーズの1作目である『Ambient 1 : Music for Airports』。タイトル通り、空港のBGMとして作られた楽曲集で、実際にニューヨークの空港で使われた環境音楽です。