素敵なシーンウォッチング FILE28 暗いからこそ美しい洞窟の神秘、竜ヶ岩洞。
夏の名残りを押しのけて、秋の風が幅を利かせだした10月が始まった日。非日常の世界を味わいに浜松市北区にある鍾乳洞、竜ヶ岩洞を訪れました。
僕を含め多くの人達の日常は、地に足が付いた陸の上にあります。しかし、パイロットの日常は空が舞台であり、漁師さんは海原が仕事場です。陸・海・空以外の場所となると、残るは海中と地中、そして宇宙となります。人の力を最大限に駆使してもたどり着くことが困難な場所、そしてその謎の部分が解明されていないものが、海中の深海であり、広大な宇宙、そして地中となります。それ故に、人は興味を抱き、その謎に挑戦するのです。
子供の頃にTVで放送されて憧れた、西暦2065年が舞台の人形劇「サンダーバード」。特に架空の超音速有人原子力輸送機サンダーバード2号のコンテナ(3番もしくは5番)に格納されて、災害現場に到着するとコンテナ内部から掘削地点まで自走するジェットモグラは、サンダーバードのアイテムの中で一番の人気機種でした。
実はこの「国際救助隊サンダーバード」の原案は、1963年にドイツのマチルド鉱山で起きた落盤事故が発想のもとになっているもので、129人が生き埋めになった浸水落盤事故で、29人が死亡しましたが懸命な救助の結果100人が救出されたこと(レンゲデの奇跡)を知り「国際的な協力で、科学的な設備を持って救助すれば被害は食い止められる」と思いつき、企画案「国際救助隊」が作られたそうです。
話が大きく逸れてしまいましたが、竜ヶ岩洞の魅力は、非日常の中でもそう簡単には直接見ることができない“地中”を目の当たりに体験できることにあります。竜ヶ岩洞は、東海地方最大規模の鍾乳洞で標高359.1mの竜ヶ石山にあり、洞窟を形成する石灰岩は2億5千万年前に生成された秩父古生層と呼ばれる地層で形成されています。総延長1046mのうち、400mが一般公開されていて、洞窟内はさまざまな形をした鍾乳石が見られ、ライトアップされた空間は神秘に満ちあふれています。中でも洞窟最大の迫力を感じる、天井岩から勢いよく30m落下する大滝は、人の手で作られたアトラクションとは違い、自然が創造した究極のアートであり想像を超えた存在感とドラマがありました。また、鍾乳洞は100年で1センチしか形成されなという事実を知り、この竜ヶ岩洞の様々な形をした岩たちの悠久の歴史に感動を覚えたことも付け加えたいと思います。
一年中を通して気温18度が保たれている洞窟は、夏は涼しく冬は暖かい自然が作った正に快適な空間で、湧き水の効果で洞窟内はマイナスイオンが満載されているという、居るだけで気分がアップするパワースポットでもあります!そして見逃してはならないのが、フルーツ・コウモリの餌やり見学。コウモリも普段、なかなか目にする機会がない動物ですし、ましてや人の手で餌やりができるという事実。
光のない暗い洞窟に入ったからこそ見ることが出来る美しい自然の神秘。暗い場所にいるからこそ見えるものがあるのだと、この竜ヶ岩洞で悟りました。星の輝きも、ネオン輝く都会の夜空では見えません。その逆に、コロナで世界中が暗く沈んだ時だから見える、人々の団結したハートに灯る希望の光。竜ヶ岩洞は見る事だけでなく、感じる事が心地よい素敵なシーンでした。