富士山を望む空中庭園・伊豆の国パノラマパーク 素敵なシーンウォッチング FILE44
日々、静岡の魅力を探索して回る「ラジオで見る静岡」は、五感で感じる様々な種類があります。季節ごとの表情にある風景や味覚。またその場所だから生まれた奇跡や名所旧跡などの観光スポット。人情味溢れる話題の人物やイベントなど。そんな魅力満載の静岡の中で、外すことができないのが富士山です。
しかし、実はこの富士山を取材するとなると余りにも魅力があり過ぎて、フォーカスを絞らないとその魅力は伝わりません。写真を撮るだけでも、いつの季節にどの角度からが一番美しいのか?尽きない論争が起きるでしょう。
今回、フォーカスを当てたのは、富士山だけでなくその周辺も見渡せる絶景ポイント、伊豆の国パノラマパークです。伊豆の国とは、2005年(平成17年)4月1日に、田方郡伊豆長岡町、大仁町、韮山町が合併して新しく作られた伊豆の国市のことで、とても新鮮でなおかつ歴史漂う名称として魅力的な響きがあります。そしてパノラマパークがあるのが、伊豆の国市にある標高452mの葛城山(かつらぎやま)。他地域の葛城山と区別するために伊豆葛城山と呼ばれることもあるそうで、山の形が方向によっては釈迦が寝ている姿に見えることから俗に寝釈迦山とも呼ばれたりもします。
私たち素敵なシーン・ウォッチャーズは山取材の時は、基本徒歩で機材を担いで山頂を目指しますが、今回はパノラマというにふさわしいロープウェイで山頂に辿り着きました。片道約7分の空の旅。高度が上がるにつれ伊豆長岡温泉の街並みや狩野川や富士山、伊豆箱根鉄道駿豆線や伊豆中央道、そして伊豆の国市全体が見えてきます。山頂には展望台があり、延喜式内社の倭文(しどり)神社の論社とされ、明治時代に山麓の小坂神社に合祀された葛城神社や、鎌倉時代より鎮座していたと言われる百体地蔵などがあります。
この葛城山の山頂は歴史ある史跡も見所ですが、季節を問わず絶景を楽しめるモダンな空間、富士見テラスが魅力を放っています。空中公園と呼ばれる山頂の施設には、富士見テラスを始め富士見の足湯、プレミアムラウンジ、かつらぎ茶寮、葛城珈琲店、そしてちびっこに人気の丸太アスレチックもあり、老若男女、カップルや親子連れはもちろん、誰もが楽しめるエンターテイメントが存在しています。施設の充実もうれしいポイントですが、一番の見所はやはりその名が示すパノラマの雄大な絶景にあります。
富士見テラスに立つと正面に富士山が飛び込んで来ます。見上げるのでもない頃合いの良い角度とでも言うのでしょうか、リアルな富士山の表情が手に取るように伝わってきます。その左手には、鮮やかなパステル色でスケッチしたかの様な碧くたなびく駿河湾が見え、三島・沼津市、富士市、静岡市が霞んでいました。取材日は真冬の風の強い日でしたが、それ故に風のおかげで富士山上空の雲が取れて、足元まで見える富士山の美しいプロポーションを拝むことができました。また空中公園を一周すると、伊豆の国市の全体像がつかめ、古の武将たちがこの場所で野望を企てたであろうと戦国時代のロマンが蘇ります。
冒頭でお話ししたように、名所にはこの季節が一番綺麗と言われるベスト・シーズンがありますが、この伊豆の国パノラマパークに関してはそれが当てはまらないかもしれません。なぜなら、四季折々の表情が360度で存在するからです。2月には梅林が声を上げ、3月中頃には桜が咲き、5月にはつつじが、そして6月には紫陽花がと言うように草木だけでもその賑わいを楽しめます。そして初夏には風の香りを楽しみ、夏には燃えるような木々たちの息吹が聴こえてくるはずです。
伊豆の国パノラマパークの魅力は、ロープウェイによって誰もが山頂のパノラマ展望を気楽に味わえるところにあります。富士山に登れなくとも富士山をまじかで見れ、季節を問わず快適な山頂の空間で絶景を安全に味わえる幸せ。ちなみにこのロープウェイは、旅館経営者で観光協会長であった杉山勝美氏が伊豆長岡温泉の目玉施設として計画。当初は夢のような計画で相手にされなかったそうですが、町を説得し「東洋一のゴンドラ」と謳われるロープウェイを1962年(昭和37年)5月に開業しました。その後1992年に現在のロープウェイを新設し、2016年に富士見テラスが作られ現在に至ります。
今回の素敵なシーンは、誰もが気楽に雄大な絶景を楽しめる、伊豆の国パノラマパークです。