遠州七不思議 波小僧に見る静岡カルチャ― 素敵なシーンウォッチング FILE 31
静岡の各地を巡ってその魅力をレポートする「ラジオで見る静岡」が始まって、早7か月が過ぎようとしています。その間に30カ所の魅力あるスポットを紹介させてもらいましたが、静岡の魅力あるスポットはこんなもんではないことを日々取材していて、より強く感じる次第です。そんな中、今回の取材先として浮かび上がったのが、常々気になっていた静岡県の遠州地方に伝わる七つの不思議な物語、‟遠州七不思議“です。
この遠州七不思議、調べてみると7つどころか、10以上の不思議が出てきます。まず、このこと自体が不思議です。7不思議と謳っているのに調べるとどんどん出てくる! ネット検索しただけでも、夜泣き石、桜ヶ池の大蛇、池の平の幻の池、子生まれ石、三度栗、京丸牡丹、波小僧、片葉の葦、天狗の火、能満寺のソテツ、無間の鐘、柳井戸、晴明塚とすでに13ありました。これは調べる価値ありだなということで、今回はこの中の波小僧をお送りしましょう!
僕が波小僧の存在を知ったのは、御前崎遠州灘県立自然公園に指定されている南遠大砂丘の一部、浜岡砂丘のサーフ・ポイントに行った時です。河津桜で有名な白砂公園の一角、砂丘の入口にあるオブジェが波小僧との最初の出会いでした。この「波小僧」、実はもう一匹、浜松市舞阪町に「浪小僧」(字が違いますが)がいます。どちらの小僧も言伝えはほぼ同じで、その昔、漁師に捕えられた波小僧が海へ逃してくれた恩返しとして、天気の変わり目を大きな音で知らせるようになったというもので、地元では、天候の変わり目に突然鳴り出し、すっと鳴り止む遠州灘の海鳴りのことを、「遠州灘の海鳴り」「波小僧」と呼んでいて、環境庁が定めた「日本の音風景100選」にも選ばれています。
調べ物をしていて面白いのは、知らなかったことを知ることでより興味が深くなる喜びですが、‟波小僧“を調べていて「日本の音風景100選」というものがあることに驚きました!
この「日本の音風景100選」は、1996年に当時の環境庁(現・環境省)が「全国各地で人々が地域のシンボルとして大切にし、将来に残していきたいと願っている音の聞こえる環境(音風景)」を広く公募。「日本の音風景検討会」の選定審査の結果に基づき、これらの応募のうちから音環境を保全する上で特に意義があると認められる100件を選定したもので、波小僧は44番目遠州灘の海鳴・波小僧・静岡県遠州灘・海と登録されていました。
言伝えとは、昔から口づてに伝えられてきた事柄で、伝説・ことわざなどのことを指しますが、子供の頃に祖母から「古い言い伝えは守ること」なんて言われて、おっかないことなんだと子供心に思ったものです。この波小僧も、気象衛星が上がり精度の高い気象情報が簡単に手に入る今の時代にはただのかわいいマスコットでしかありませんが、実はこの言伝えが始まった頃は海に出る人にはとても重要な情報だったのです。今でもそうですが、漁師の人やサーファーは風を読んでから海に出ます。環境庁が「日本の音風景検討会」にこの‟波小僧”を選定したのは、とても良い選択だと感じました!
さて、素敵なシーンはどこなのか?当時の人の「より安全を期して」という後世の人に伝える気持ちが生んだ‟どんどん増える七不思議“に気持ちが動きました!