祝!日本遺産に選ばれた弥次喜多道中、藤枝市の足跡を辿る VOL 3  久遠の松の魅力に勝る、大慶寺・住職の読経の魅力! 素敵なシーンウォッチング FILE35

子供の頃聴いたお坊様が唱えるお経は陰気で、どこかのお通夜で流れてくる線香の香りと同じく忌み嫌っていました。それは子供にとって、父親が酒のつまみに美味しいと言いながら食べていたくさやの干物と同じ解釈で、今となれば全くもって正反対の存在になっています。

お経とは、仏教の経典のことでお釈迦さまが弟子たちに説いた教えを伝えるもので、お経を読むことは精神的にも良いと言われています。では、なぜお経が身体に良いのでしょうか?それは、呼吸することすなわち息を吐き吸うことで、心が洗浄されると言います。また、ただ呼吸をするだけでなく、お釈迦さまが弟子たちに説いたありがたい教えを身体に取り込めるからでもあります。ですから、お経は、身体と心のバランスを整えてくれる音楽でもあると大人になってそう思う様になったのでした。

大慶寺は、慶長5年に建立された東海道五十三次の藤枝宿の中心にある寺院で、日蓮上人ゆかりの寺として、東海道を歩いた旅人や文人墨客、有名人が参詣したと言われています。また地元の田中城の祈願寺ともなり、日蓮上人と法華経を信じる藩士や文人の尊崇を受け、境内にはこの地区の有名人の墓が祀られています。そんな由緒正しいき名寺には、もう一つの魅力が存在します。それは、境内に鎮座している、見るだけで良いことが舞い降りて来そうな大樹‟久遠の松“です。

久遠の松は、「日本の名松100選」と静岡県の天然記念物に指定されて、日本遺産構成文化財のひとつにもなっている高さ25m、枝張28m、根周り約7m、樹高約25mに枝を伸ばすクロマツの樹です。今から760年前、日蓮上人が比叡山で修行した帰り道、この地に立ち寄って記念に植えたものと伝えられています。久遠というのは、「法華経」の中に出てくる言葉で、始まりもなく、終わりもなくずっと続くことを言い、この久遠の松こそがそのことを象徴しているのだと言えるでしょう。 

そして今回の素敵なシーンはこの久遠の松!といつもの流れならそうなるわけですが、大慶寺を訪ねて第38世、大場唯央(おおばゆいおう)住職にお会いしてお話を伺い、そしてお経を聴かせていただいて、その素晴らしさに久遠の松が残念ながら敗れ去ったわけです!

悠久の息吹を今に伝える久遠の松の素晴らしさは言うまでもありません。ですが「東海道中膝栗毛」で十返舎一九が、愛知県豊川市の御油の松並木については書いているのにこの松の存在を書き込んでいないことは、まだその当時はこの松は久遠という称号は与えられておらず、歌川広重が描いた街道の松の方がよっぽど立派だったに違いありません。しかし、想像力を働かせると僕たちもそうであったように、弥次さん喜多さんは何気なくこのお寺の近くを歩いていると素晴らしいお経が聴こえてきたので、この大慶寺にお参りしようか!となったのではないかと思います。実は大慶寺を取材する当初の目的はこの久遠の松だったのですが、境内に入ると松の存在を脅かす読経が耳に入ってきて、僕たちはしばらくその存在感に圧倒されていたのです。

大場住職はお話で「久遠の松の魅力は立派な枝ぶりという面もありますが、実はそれを支えている根があるからこそ、この大樹があるという事を忘れてならないと思うのです」という言葉が今も耳に残っています。それはその言葉通り、大場住職は、仲間と一般社団法人SACLABOを立ち上げたり「藤枝おんぱく」などの着地型観光の事業や「蓮華寺池界隈エリアリノベーション」など‟開発僧“として根っこを大切にした地域を盛り上げる活動を住職自ら行っておられるからなのです。

故に今回の素敵なシーンは、大慶寺・大場住職の読経の魅力とさせていただいた次第であります。

ここ大慶寺は藤枝市の東海道沿いに位置する寺院
久遠の松は樹齢700年を超える巨木
大慶寺本堂では延年講という行事が行われていた
静かな参道には読経の声だけが聞こえていた
煌びやか本尊
大慶寺住職 大場唯央さん
住職の祈祷は鬼気迫るものがあり、その迫力に圧倒された
ロケの様子はこちらをチェック

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