DESSERT MUSIC #34

「Hotel California」Eagles  (11/ 23 オンエア)

1970年代のアメリカを代表するヒット曲「ホテルカリフォルニア」。その歌詞にあるこの歌の重要なポイント、♪「僕のワインを持ってきて」と頼んだら、彼は「私どもでは1969年以来スピリットは在庫しておりません」と言いました♪

この「1969年からスピリット(魂)は在庫しておりません(失っている)」と訳される当時のアメリカの様を的確に表現したワンフレーズは、この曲が発売される1976年ティーンエイジャーだった僕には難し過ぎてピンと来なかったのですが、それから何年かが過ぎて僕自身が大人になったと感じた時に、このフレーズの意味がやっと理解できたのでした。それは、この歌詞で語られるアメリカについてのことでなく、スピリッツ、要は魂を自身が持っているか否かという僕自身のスタンスについてのことであり、時代や周りに流されていた日々から脱出できるか出来ないかという、生き方、生き様を問われている歌なのだと気が付いた時でした。

弥次喜多道中には当時の風俗が面白可笑しく描かれていて、苦労話も味付けのひとつであったような錯覚を覚えますが、実際は命がけの冒険旅行だったのではないかと想像します。そんなことを考えていると、「ホテルカリフォルニア」の最後の歌詞で警備員が言うセリフ♪私たちはあなたを受け入れるしかありませんが、でもあなたはいつでも好きな時にチェックアウトできます。しかしあなたはここを離れることはできないでしょう♪というフレーズが大旅籠屋柏屋を見学している時に浮かんできました。

今日の旅は、国内旅行であれば危険な冒険旅行は容易く見つかるものではないでしょう。しかし、弥次喜多道中は冒険活劇であり、また当時はそれが当たり前だったはずです。そんな中で、当時からも穏やかな静岡の岡部宿についた旅人は「出来るならここに住んでしまいたいなぁ」と考えたかもしれません。おいしい食事に暖かいふとん、安全な寝床に優しい人々。しかし、旅人は目的地に行かなければなりません。「ホテルカリフォルニア」の解釈とは違いますが、旅人はスピリット(魂)がある限り、旅の目的を完結しなければならないのです。

60年代のアメリカと江戸時代の日本を結びつけるにはいささか無理があり過ぎたようですが、僕が当時の旅人なら「ホテルカリフォルニア」からも「大旅籠柏屋」からも旅立つことは出来なかったと思います。きっと弥次さん喜多さんもそうであった?いやそうであってほしいと当時の面影を映す、柏屋の中庭の美しい紅葉を見てそう感じたのでした。