今年の桜 素敵なシーンウォッチング FILE 48

身近な花でありながら実際に触れ合う時間は限りなく短く、咲いたと思えばすぐに散ってしまう、その儚さ故に余計に思いが募る桜。そして長い我慢の季節から解放されて新しい季節に移り変わる、その象徴が桜でもあります。

小さかった頃は、桜が咲くシーズンが四季の中で一番嫌いでした。春休みは短く、クラス替えがあり、進級すれば環境が大きく変わるのでなんとなく落ち着かず、不安定な気持ちが続くからです。しかし大人になると寒さから解放され、身軽になって人々が少しずつ明るくなって行動的になる春は、夏の準備期間として成長するごとに悪くはない季節になりました。そして、人生が朧げながら見えてきた年齢になるとあと何回、桜を見ることが出来るのだろうと春の到来をしみじみ感じる様になりました。

今回の素敵なシーンは、今年の桜です。天気の良い日、伊豆の国市の城山下の狩野川堤防に並ぶ河津桜の並木を見に行きました。


日本人が愛してやまない桜の歴史は、日本最古の「古事記」(712年)の記録より始まります。この古事記では、木花開耶姫(このはなさくやひめ)と呼ばれる女神が登場して、かすみに乗って富士山の上空へ飛び、そこから花の種を蒔いたと記述されています。

桜は、英語表記ではCherry blossom、Japanese cherry、Sakuraと記述され、北半球の温帯に広く分布していますが、美しい花の咲く種類はアジアに多く、しかも日本列島が中心で、多くの種類が集中しています。また、中国や朝鮮半島にもかなりの種類があり、日本と共通の種類もありますが、中国の奥地やヒマラヤ地方などには、日本のものと種類が異なる珍しい花の咲く桜が存在しています。ヨ-ロッパには、日本の桜のように花の美しい種類はなく、サクランボ、いわゆる実桜の類がほとんどで、これらは私たち日本人の持っている桜のイメージとはかけ離れた種類ばかりです。

サクラはバラ科、サクラ亜科、サクラ属の落葉高木または低木の樹木で、日本にはヤマザクラ、オオシマザクラなど9種を基本にして、変種をあわせると100以上のサクラが自生しています。それらを開発して出来た栽培品種が200種以上、そして分類によっては最大で600種存在すると言われており、世界でも圧倒的に多種多様な栽培品種を開発してきた歴史があります。

美しさを追求し、桜までをも改良する日本人らしい発想。日本人は太古の昔から桜好きだった!というDNAは何千年も受け継がれています。しかし、そんな日本を代表する桜ですが、国花ではありません。国花とは、その国を象徴する花で、国民から広く愛されて親しまれている花を言います。国によって違いますが、法律で定められている物もあれば、昔からの歴史的な慣習で国の花と認識されている物までさまざまです。貨幣やパスポート、切手などによく利用されています。実は日本の国花は定められていないのです。それでも、桜は日本人の心の花として君臨しているのです。

毎年毎年、花が咲いたというだけでトップ・ニュースになる花はありません。卒業式や入学式。人生の門出にいつの時も寄り添ってくれていた桜。人は、桜を見るとそれぞれ自分の世界に引き込まれて行きます。桜を誰とどこで見たのか?もう遠い記憶の中で忘れてしまいましたが、桜を見ると様々な人たちの記憶が蘇ってきます。

今回の素敵なシーンは、今年の桜です。桜を見ながらの宴会は、残念ながら今年もまた昨年と同じく出来ませんが、来年こそはお花見をみんなでしたいものです。

PS:ちなみにそれぞれの国花は、アメリカとイギリスはバラ、フランスはスズラン、イタリアはデイジー、オランダはチューリップ、スイスはエーデルワイス、スペインはカーネーション、ドイツはヤグルマギク、そしてロシアがヒマワリです。

ロケの様子はこちらをチェック
狩野川堤防に並ぶ河津桜の並木
満開の桜を愛でようと人々が散策している
桜の下のベンチで休む親子
川のせせらぎと鳥のさえずりを聞きながらの花見は格別
訪れた時は河津桜が見頃
早朝の桜は凛としていて清々しい
幾重にも重なる桜の枝は圧倒的なボリューム感
朝露がきらめく桜はとても綺麗だった

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